ところで上場してからも成功し続ける経営者はどのような方たちでしょうか?
頭のいい経営者はリスクを聞いてきますが、できない経営者は「これをやってもいいですか?」と聞いてきます。頭のいい経営者は自分で判断したいので、判断する材料としての意見を聞いてくる
のです。ですから、こちらも「こういう風にしろ」とは言いません。
例えば、「A社を買収しようと思っているのですが、買収してもいいですか」と聞かれても、いいとも悪いとも答えられません。ですが、「A社を買収しようと思っているのですが、財務諸表を見てコメントをください」と言われれば、「ここにリスクがある」「引当金が積んでいないよね」「債務保証がありそうだから、A社のオーナーに確認しなさい」などと答えられます。
常にリスクとチャンスを案分にかけてやるべきです。
自分でも判断できない情報は専門家の先生に聞くということですね。
起業家の方はイケイケ、ドンドンでやりますが、 最初に撤退基準をきめておくべきです。例えば、当初予想しているキャッシュフローの曲線から500万円下回ったラインを作って、その下回ったラインが3ヶ月続いたら撤退するなどと決めることです。なかなか撤退はしずらいと思いますが、事前に基準を作っておかないと、それこそ泥沼にはまります。
投資したらなんとしても回収したいと思ってしまいますよね。
「もうちょっとしたらいける」と思ってやっているうちに、あっという間に1年が経ってしまいます。オーナーが一生懸命にやっていても、ハタからみたら明らかに失敗という場合もありますからね。そういったことはいくら部下に言われても聞かないでしょうから、昔の自分に教えてもらうという意味でも、事前に撤退基準を作っておくべきなんです。難しいとは思いますが、やるべきです。
特に、そういった状況で、ベンチャーキャピタルがお金を出してくれた場合、それは返さなくもいいお金ですから、さらにハマってしまいます。それで資金を使い切ったらもう終わり。撤退すれば、少しはキャッシュが残る場合もあるのですが……。
引き際が肝心ということですね。
撤退基準にきても、オーナーはなんとか頑張ろうとしますが、持ち直すことは難しいと思います。それよりも新たな事業をやった方がいいでしょう。なぜなら、冷静に考えればわかることですが、そのまま事業を続けるということはマイナスの状態からスタートしているのと同義ですし、それならもう一度、ゼロからスタートする方が楽でしょう。
私の知り合いのオーナーも1店舗こけたら徹底して、次を攻めるということをしっかりされていらっしゃる方がいますね。実際にこのような判断ができるオーナーはどれくらいいるのでしょうか。
1割くらいの方でしょうか。 撤退できるオーナーは強いです。もっと言うと、最初から撤退しやすくしておくことですね。つまり、投下資金を回収しやすくしておく。 会社の内部で事業を興すと切り売りしなくちゃいけないので手間が掛かりますから、最初から別会社にして投資する形にしておき、株券を売っておけばいいわけです。また、人を切り離したくなければ出向にしておく。このような形態で事業をスタートすると、撤退の意思決定が後で楽になります。
駄目だと思ったら、すぐに撤退できるのが本当の事業家ですよ。撤退しやすくするからといって意気込みが減るわけではないのです。
しっかりリスクヘッジしておくべきということですね。
「もう駄目だ」と思う前に抜けやすくしておくことですね。公開前に投下資金を回収しておけば、この事業を止めても儲かっているわけですから、撤退しやすくなる。そういう考え方やポジショニングにいると、先に先に頭が働きますよね。そうして考え方をルーティン化していくことです。慣れている人は、自然にそういう風に行動していますからね。
例えば、うどん屋を興そうというとき、今の会社か、それとも別の会社でやろうかと考えたとします。この場合、別会社で始めておけば「このエリアは失敗したな」と思ったときに、内装を壊したり、居ぬきで客を探したりせずに、株式を売ったらそれで終わります。今なら1円でも会社が作れる時代ですし、その方がどんなに高く売れるかわかりませんよね。店舗はオーナーチェンジでもなんでもないわけですから。
持ち株会社の方が事業の切り売りがしやすいのです。わかっている人はわかっていますね。
先生のお話は実態に沿った生の情報で、我々がなかなか聞けないお話ばかりでとても参考になりました。ありがとうございます。
ありがとうございます。
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