規模によって必要な資金は異りますが、事業計画に基づいて事業が運営できるだけの資金を用意すべきだと思います。
自己資金がなく、借入や融資をしたいときはどうすればいいでしょう?
起業をするにあたって、初期投資が必要なビジネスモデルであるにも関わらず、自己資金がまったく用意できないようであれば起業は止めた方がいいでしょう。足りないのであれば、国民生活金融公庫や信用保証協会が起業家向けの融資制度を用意していますので、利用することが可能です。
現在は会社法も改定され、資本金(自己資金)がまったくなくても起業は可能となりました。ただし、融資や投資を受けたいと考えた場合、誰でも受けることができるわけではありません。例えば、国民生活金融公庫の創業融資を利用するには自己資本が融資の限度額になります。
他にも、投資家や取引先に対する信用力を考えた場合、資本金がないと起業に向けて計画的に貯金ができなかった、あるいは起業の際に周囲の人に資金的な協力を得られない人間であると判断されてしまうでしょう。外部の信用なくして事業が成功するはずもありません。
ですが、起業時に資金調達するのは簡単ではなさそうですね。
起業家がスタートの段階から融資を受ける場合、基本的には、国民生活金融公庫や信用保証協会、投資家からの投資しかありません。融資を受けるためのポイントはいろいろありますが、大事なことをひとつだけ挙げろと言われたら、国民生活金融公庫では「自己資金」、信用保証協会では「前職が何であったか」ということです。この問題がクリアできないと、融資は難しいと考えてください。
また、金融機関は事業の将来性に投資をするのではありません。それは投資家の役目です。金融機関は貸したお金がきちんと返済されることが最も重要なことになります。ですから、「なぜ資金が必要なのか」「どのように返済していくのか」を明確にした事業計画の準備が必要となります。
どういう事業をやるかにもよりますが、大規模な設備が必要な事業になると、返済できる金額というのは、納税後の利益に減価償却費分を加えた資金になるわけです。こういう場合は、5,000万円を借りて、5年で返すために、いくら売上を上げて、いくら利益を出すのかといった具合に、逆算形式で予算を作る。
対内予算と対外予算とよく言われますが、ここでの予算は対外的なものなので、借りた5,000万円を返済できるという前提があって数字を逆に追っかけていくので、売上を上げていくというよりも、利益を上げていくように予算を作っていきます。
そうなると、数字をいくらでもでっち挙げられると思いますが……。
金融機関も専門家ですから数字を見ればでっち挙げかどうかはわかりますし、そもそも貸してくれる限度金額も決まっています。
例えば、5,000万円の借入れをしたくても、2,000万円しか貸してくれなかった場合、自分で3,000万円を調達してこなければいけなくなる。そうすると、2,000万円を返済できるプランを作る必要があります。ただ、それは対外的に出すものなので、対内的な数字はしっかり上がるようにプラン作りをするべきです。
また、借りた資金を返済するだけであれば事業をやる意味がありません。ですから、プラスアルファの計画は仮説を立てながら作るべきです。そこで作った数字が返済可能な数字に満たないようであれば、その事業自体が破綻なので、やるべきではないということになります。
ここまでをすべて自分だけでやろうとすると大変なので、売上を上げるロジックさえ自分で作れたら、後は会計事務所などの専門家に依頼したり、わかる人に相談しながら作るのがいいでしょう。売上を上げるロジックは経営者しか作れないですから。
数年後の事業拡大に備えて融資を受けることを前提にした場合、起業当初で準備しておくことはありますか?
融資を受ける場合、設備投資のためと運転資金を調達するためと2つのパターンがあるかと思います。設備投資が必要な場合、1,000万円程度の設備投資をする会社であれば、当然それ以前に黒字を出しているケースが多いですから、まず黒字をしっかりと出していこうということになります。
運転資金が足りなくなって調達する場合、建設業界などのように、仕入れに必要な資金が先に出ていき、入金が数ヵ月後になるというときなどがこれにあたりますが、この場合も黒字であるということが絶対条件になります。
何期ぐらいの黒字経営が必要でしょうか?
業績が良ければ2期目でも借りられますが、通常、決算で3期の黒字が必要です。融資には、プロパーと公的な金融機関である国民生活金融公庫や信用保証協会を利用した融資があると思いますが、2年後、3年後の運転資金が必要な会社は銀行との付き合いをしっかりと作っておかないといけないと思います。
そのためには、資金が必要であってもなくても、制度融資である程度の資金を借りておいて、銀行の窓口と繋がった上で、決算が終わったらしっかりと報告をし、手形が入ってきたら手形の枠を頂くというパイプラインをしっかり作っておくべきです。
銀行にも、信用金庫、地方銀行、都市銀行とあるのですが、地場の信用金庫と関係を作っておくことがいいと思います。都銀の方がネットバンキングなどもあって便利なのですが、あえて信用金庫と付き合って、融資を借りたり、定期預金を積んだり、手形割引の枠をもらったりしながら、関係をひとつひとつ積み上げて、3年後に融資をお願いしたりしていきましょう。
重要なことは金融機関との付き合い方のプロセスを起業当初から組んでおくことです。そのために一番簡単なのは定期預金ですね。制度融資の申し込みなども、都銀で行わずに地銀や信用金庫でやる。「手形が入ってきたんだけど」「当座預金を作りたいんだけど」「割引できますか」など、地元の金融機関の担当者と関係を築いてプロパー融資を受けていく。
結局は、制度融資の範囲で収まるか、プロパー融資が必要になるかという話ですから、どんな会社であっても、都銀と地銀の口座をひとつずつは持っておくべきですね。
いざ融資を受けようという時に備える意味で地元の銀行と付き合っておくべきなんですね。ちなみに、利益を生み出すために、会計上留意する点はなんでしょうか?
中小企業の会計は、税務署が税金を取りやすいような基準となっているため、会計上の利益と実際のキャッシュフローは大きく乖離してしまいます。会計の損益とキャッシュフローの乖離の内容を把握し、会計上の利益は対外的な資料であると考え、原点であるキャッシュフローをベースにした正しい経営判断を行うことです。
キャッシュフローをベースとした経営法とは具体的にどういうことでしょうか?
どんなクライアントにもお話することは、入金サイトと支払いサイトについてですね。入金サイトと支払いサイトの均衡が取れていないビジネスをする人には「将来的に絶対融資が必要になるので、節税は控え、計画的に利益を出してください」と言っています。
キャッシュフローと言うと難しいですが、お金が入るサイクルよりお金が出ていくサイクルが前倒しされるビジネスモデルは組んではいけないんですよ。絶対にお金が後で出ていくモデルを組むことです。組めないのであれば、融資が前提になってきます。というのも、事業が大きくなればなるほど絶対に支払えなくなりますから。
一番重要なことは入金が早くなるような契約、交渉をしていくことです。とにかく支払いは遅くなる方がいい。難しく考えてなくていいんです。単純にお金は早くにもらい、お金が入ってから払うということだけですね。
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バックナンバー Vol.1『突然の起業は成功しない!?起業前の知識と人脈とまず活かせ!』 Vol.2『外部ブレーンを使って起業を成功に導く』 Vol.3『どうやって売上をあげるのか?仮説を立てて事業計画を明確に』 Vol.4『資金調達の近道は、銀行とのパイプラインを作ろう』
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