1-1.会社の機関・資本金等を決める。
(3)機関
新「会社法」においては、会社組織の機関設計の幅が広がり、設立しようとする会社の実態に即した機関設計が重要となります。
従来の「商法」では、株式会社は取締役3名以上、監査役1名以上・代表取締役1名以上を定めなければなりませんでしたが、従来の有限会社のように取締役1名だけでもOKとなりました。 ・機関設計のルール
株式会社には、最小限「株主総会」と「取締役」という機関を置かなくてはなりませんが、その他の機関を、どのように設置するかは、各会社が決めることができます。
ただし、この機関設計には新「会社法」上のルールがあります。
例えば
(1)すべての株式会社には、株主総会のほか、取締役を設置しなければならない。
(2)取締役の員数は、1人または2人以上である。ただし、取締役会を置くには3人以上必要である。
(3)取締役会を置くには、監査役または会計参与または3委員会等のいずれかを置かなければならない。
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等があります。・実際にどのような機関設計ができるか?
公開会社でなく、大会社でない場合、次のようなパターンが可能です。
(1)株主総会・取締役
(2)株主総会・取締役・監査役
(3)株主総会・取締役・監査役・会計監査人
(4)株主総会・取締役会・会計参与
(5)株主総会・取締役会・監査役(※従来の商法上の株式会社の機関)
(6)株主総会・取締役会・監査役会
(7)株主総会・取締役会・監査役・会計監査人
(8)株主総会・取締役会・監査役会・会計監査人
(9)株主総会・取締役会・3委員会・会計監査人
※いずれの場合も、+会計参与の設置OK |
・各機関は何をするのか?
取締役……株式会社の業務を執行します。取締役は(他に代表取締役、その他会社を代表する者を定めた場合を除き)株式会社を代表します。
取締役会……設置会社の場合は、取締役会において会社の業務執行の決定を行います。
監査役……取締役の職務の執行を監査します。公開会社でない株式会社においては、定款に定めることにより、監査の範囲を会計に関するものに限定することができます。
会計参与……取締役と共同して、計算書類等を作成します。
会計監査人……株式会社の計算書類等を監査します。
3委員会……指名委員会・監査委員会・報酬委員会。各委員会は、取締役会決議により取締役の中から選定された委員3名以上で組織され、次のような業務を分担します。
指名委員会……取締役の選任・解任に関する議案を決定等
監査委員会……執行役・取締役等の職務執行の監査等
報酬委員会……執行役の報酬等の決定等
※資格として、「会計参与」は公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人、「会計監査人」は公認会計士、監査法人が必要。 |
・設立にあたり、どのような機関にすれば良いのか?
機関設計の考え方の一つとして、参考にしてください。
(1)個人事業者の法人成りの場合のように、できる限りシンプルな経営形態にしたい場合は、最小限の 「株主総会」・「取締役」にする。
(2)数名の出資者で会社を設立し、会社経営は取締役に任せたいという場合は、「取締役会」も設ける。この場合は、「監査役」もしくは「会計参与」も設けなければなりません。
(3)事業資金の融資を受ける等、信頼性を高めたい場合は、「監査役」又は「会計参与」を設ける。 |
知恵袋
平成18年度税制改正により、同族会社のうち代表取締役等その法人の業務を主宰する役員とその同族関係者等が株式の90%以上を有し、かつ、常勤役員の過半数を占めている法人(特殊支配同族会社)においては、役員給与の額の内、給与所得控除額に相当する部分として計算される金額は、損金に参入しないこととされました。
この法令は、一定の条件においては適用されませんが、個人事業者の法人成り等、節税目的で設立される場合には、ご留意ください。 |
・取締役・監査役の任期
新「会社法」においては、取締役の任期2年、監査役の任期4年のところを、公開会社でない会社については、任期を10年まで伸長できるようになりました。
知恵袋
役員の任期満了時には、改選決議をし、役員の変更登記(同じ者が再選された場合でも)をしなければなりません。これを遅滞すると、過料が科せられます。役員が変わっていないからと、そのままにしていて、気がついた時には何万円もの過料を取られてしまったという会社は多々あります。任期を長くすることは、この役員改選の手続を頻繁にしなくて済むというメリットがあります。
ただし、ここで気をつけなければならないのは、変動の激しい社会時勢の中で、会社の機関構成の見直し等をせざるを得ない場合に、任期の残っている役員を会社都合で解任するとなると、残存任期に対する損害賠償を請求されるおそれが出てくることにあります。このような点も考慮の上、任期の伸長を検討してください。 |
(4)資本金
新「会社法」においては、最低資本金規制が撤廃され、資本金は何円でもOKとなりました。 ・資本金の決め方
「設立する会社の資本としていくら必要か」「発起人がいくらずつ出資できるか」を主体に考えて定めれば良いでしょう。ただし、次のような点にも注意が必要です。
融資や取引の条件、許認可の要件等に一定の資本規模が要求される場合があります。資本金1,000万円以上の法人については、設立事業年度と翌事業年度の消費税の免除が受けられません。 ・現物出資
金銭以外の財産をもって出資することができます。これを「現物出資」と言います。現物出資する場合には、次のような書類が必要となります。
(1)現物出資する財産の価額が500万円を超える場合は、弁護士、税理士等の証明
(2)現物出資する財産が不動産の場合には、不動産鑑定士の鑑定評価書 |
1-2.商号の調査をする
従来は、同一市区町村内において、同一の事業を行っている他の会社と同一もしくは類似の商号を登記できないという類似商号の規制がありましたが、これは原則として廃止されました。 ただし、同一住所・同一商号の会社を登記することはできないという規制があります。また、会社法・不正競争防止法等に定められているように、不正の目的で他人と同一もしくは類似の商号を使用してはいけません。 よって、同一住所・同一商号の会社があるかどうかを調べる際に、同一の住所でなくても後々の紛争となりそうな同一もしくは類似の商号の会社が既にあるかを調査しておくべきでしょう。また、有名企業の名称に似ている場合も注意が必要です。
1-3.印鑑・印鑑証明書を準備する
・個人の実印及び印鑑証明書を用意する
(1)発起人
(2)取締役会設置会社については、代表取締役
(3)取締役会設置会社でない場合は、取締役全員 |
の個人の「実印」及び「印鑑証明書」が必要となります。また、本人確認、本人の意思である事の確認のために、定款認証・登記申請の際に、各人の印鑑登録されている印鑑(実印)の押印と、その印鑑を証明する「印鑑証明書」の添付が必要となります。個人の印鑑を登録していない人については、登録手続きを行った上で、印鑑証明書の必要通数を確認し、あらかじめ取得しておくと良いでしょう。
※書類作成時に、印鑑証明書の氏名や住所の表示に基づいて作成することにより、間違わずに済みます。 ・代表者印を作る
個人が印鑑登録するように、会社は、会社設立登記申請時に「代表者印」を法務局に登録します。 商号調査後に、早めに代表者印を作っておくと良いでしょう。代表者印の文字等については、まったく自由ですが、「辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形の中に収まるもの」という大きさの制限があります。 |