〜 資金をかけずにできる訳 〜
平成15年2月1日より会社設立が法律的に大きく変わりました。
今回の1円の資本金でも設立できる会社は正確には、
●確認株式会社
●確認有限会社
と、呼びます。
法律的にはこのように呼びますが、実際に会社名に「○○確認株式会社」などと「確認」の文字を入れないといけない訳ではありません。普通に「○○株式会社」と表示して構わないのです。
ですから、外見は何ら通常の株式会社・有限会社と変わるところはありません。
では、何が違うのかを通常の株式会社・有限会社と比較しながら見てみましょう。
@資本金の規制が免除された
通常の株式会社は資本金として最低1000万円がなければ設立できません。有限会社は300万円です。
しかし、確認株式会社・確認有限会社は資本金1円でも構いません。
何故、こんな大胆な制度変更が行われたかというと、ズバリ、国をあげて「起業」を促進し「雇用を増大」させようという狙いがあるためです。
A設立手続きの手間が違う
通常の株式会社・有限会社の場合の設立手順はおおよそ、
・定款(会社の憲法)を作成する
・公証人役場で定款の認証を受ける
・金融機関で資本金の払い込みをする
・登記申請書類を作成する
・法務局で登記申請をする
・登記申請に不備がなければ会社が登記され法律上、新会社が生まれる
という感じです。
ですから、会社設立までに関わる役所は「公証人役場」と「法務局」の2ヶ所だけでした。
ところが、確認株式会社・有限会社の場合は、もう一つ役所が関わります。
それが「経済産業局」です。
通常の株式会社・有限会社は定款の認証を受けた後に登記申請の準備に入りますが、確認株式会社・有限会社の場合は定款認証の後に経済産業局に「確認申請」をして確認を受けるという手順が追加されます。
「確認」というのは、会社を設立しようとする創業者が要件を満たしているかどうかの確認を受けるものです。
実は、ここが大きなポイントです。
通常の株式会社・有限会社は「確認」など受けずに原則として誰でも創業者として会社を設立できます。しかし、この確認株式会社・有限会社は「一定の要件を満たしている人」しか創業者とは成れないのです。
B「確認株式会社」「確認有限会社」の創業者となれる要件が決まっている
その要件ですが、
・事業を営んでいない個人で、かつ2ヵ月以内に新たに会社を設立して、その会社を通じて事業を開始する具体的な計画を有する者
です。
これでは分かりづらいと思いますので、逆に要件を満たさない人としては以下のような方が考えられます。
・個人で事業を営んでいる人
・法人の代表権のある役員
今回の制度の趣旨は、サラリーマン、主婦、学生、失業者などの起業を促すものだと考えると分かりやすいと思います。
つまり、現在すでに会社を経営している人や個人事業を営んでいる人に今更起業を促す必要はないので、そういう方々は除外しているのです。
もっとも、現在、会社を経営している人でも、要件を満たす人を創業者にしてパートナーとして確認株式会社・有限会社を設立していくという事は可能な訳で、実質的にどの程度、政府の思惑通りにこの制度が運用されるかは正直、不明です。
ところで、個人事業を営んでいる方が廃業したり、代表権を持つ会社役員でも辞任をすれば確認株式会社・有限会社の創業者としての要件を満たすことになります。
C定款、登記申請書の記載方法が若干変わる
通常の株式会社・有限会社とは「定款」「登記申請」が若干変わりますので、従来の会社設立本などを参考にすると確認株式会社・有限会社の書類作成では認証や受理がされないことになりますので注意が必要です。
D経済産業局への届出が増える(財務諸表が閲覧される)
通常の株式会社・有限会社では経済産業局への届出は一切必要ありませんが、確認株式会社・有限会社では毎年、財務諸表を提出したり各種の変更をした時には経済産業局への届出が必要になります。
また、届出た財務諸表が誰でも閲覧できるようになります。
財務諸表が公開されることを防ぐことは出来なくなります。
なんでこのような事になっているかというと、通常の株式会社・有限会社は最低資本金制度があるので、ある程度の資産があるものという信頼がある訳です。これが会社の利害関係者への信用ともなっている訳です。
ところが確認株式会社・有限会社では資本金が1円であったりする訳ですから、利害関係者(特に債権者)からしてみれば非常に信頼は薄いということになります。そのため、そうした利害関係者を保護するためにも資本金の少ない確認株式会社・有限会社は常に財務内容を公開しておくべし〜という発想になっているのです。
E5年以内に従来の最低資本金に増資できなければ解散、あるいは合資会社への組織変更
確認株式会社・有限会社でも設立から5年以内に本来の最低資本金(株式会社1000万円、有限会社300万円)に増資できない場合は解散、あるいは合資会社・合名会社への組織変更を余儀なくされます(通常、株式・有限会社を合資・合名会社に組織変更をすることはできませんが、確認株式会社・有限会社は特例で出来ます)。
つまり、5年以内にきちんと利益を出して増資しないことにはいけないということです。
さて、以上が主な通常の株式・有限会社と確認株式・有限会社との変更点です。
設立手続きそのものは、一箇所役所が増えたのと提出する書類の料が増えたに過ぎません。ちなみに、通常の会社設立の手続きはこちらです。
ところで、何故今回、株式会社・有限会社がこんなに簡単に(手続きは面倒になったが、資本金の準備という意味では従来と比較にならないほど簡単)設立できるようになったことがそんなに画期的なのでしょうか。
もともと、資本金で1円で設立できる合資会社・合名会社というものも存在しています。
ところが、合資会社・合名会社と株式会社・有限会社とでは創業者にとって天と地ほどの差があるのです。
それは何も対外的なイメージだけではありません。
合資会社・合名会社ではその代表者は「無限責任」を負わされるのです。
つまり、会社が負った債務は全て代表者個人の債務と同じなのです。
ですから、会社の債務を会社のお金で払いきれない場合は、個人の財産を投げ打ってでも責任を負わなければならない法律上の規定があるのです。
ところが、株式会社、有限会社の代表者は「有限責任」です。
ですから、自分が投資した資本金の範囲のみ(有限)で責任を負えばよく、原則として会社の債務と個人の責任は切り離して考えられるのです。
これが天と地の差です。
但し、いかなる場合も責任を逃れられるかというと、そういう訳ではありません。「有限責任」を逆手にとって不正を働いたような場合は「法人格否認」といって代表者個人の責任が問われることもあります。
この辺の、代表者のリスクについて興味のある方は、「起業のリスク」のページもご覧になってください。
この確認株式会社・有限会社が設立できる特例は5年間だけの時限立法です。
もちろん、こうした制度に踊らされるのではなく、じっくりと検討の上、上手に活用することが大切です。
監修:296会社どっとこむ
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