会社設立後にやることを最初の90日間で期限の早い順に並べた全体像

会社設立後にやることは、設立から5日以内の社会保険の届出に始まり、3か月以内の青色申告の承認申請と役員報酬の決定で一区切りがつきます。
| 期限の目安(設立日から) | やること | 提出先・相手 |
|---|---|---|
| 登記完了後すぐ | 印鑑カード・登記事項証明書の取得、法人口座の申込み | 法務局・金融機関 |
| 5日以内 | 健康保険・厚生年金保険の新規適用届 | 年金事務所 |
| 自治体ごと(東京都は15日以内) | 法人設立届出書(地方税) | 都道府県税事務所・市区町村 |
| 給与の支払事務所を開設してから1か月以内 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 |
| 2か月以内 | 法人設立届出書(国税) | 税務署 |
| 3か月以内(第1期が短い会社はもっと早い) | 青色申告の承認申請書、役員報酬の決定 | 税務署・社内(株主総会など) |
| 第1期の末日まで | 消費税の届出・インボイス登録(必要な会社だけ) | 税務署 |
登記が終わると、会社には次々と期限が来ます。困るのは、期限が提出先ごとにばらばらで、しかも短いものほど目立たないことです。社長1人の会社でも、役員報酬を払うなら年金事務所への届出は5日以内、税務署への青色申告の承認申請は原則3か月以内です。この記事では、設立から90日間にやることを期限の早い順に並べ、どの順番で片づければ抜けが出ないかを示します。届出書の書き方や提出先ごとの細かい違いは、それぞれの詳しい記事とカテゴリーに案内します。まず全体を一度眺めてから、自社に関係するものだけを拾ってください。
90日は4つの山に分けると迷わない
設立後の90日は、期限の固まりで見ると4つの山に分かれます。登記直後の1週間、1か月目、2か月目、3か月目です。最初の山は期限が日単位で短く、あとの山ほど「何を選ぶか」という判断が増えます。
やることの性質も山ごとに違います。前半は書類をそろえて出せば終わる手続きが中心で、後半は役員報酬の額や消費税の扱いのように、1年分のお金に響く判断が中心です。前半の手続きを早めに片づけておくと、後半の判断に時間を回せます。
登記が終わった週:証明書をそろえ、社会保険を先に出す
登記事項証明書と印鑑カードはまとめて取る
登記が完了したら、法務局で印鑑カード(会社の印鑑証明書を取るためのカード)を作り、登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)と印鑑証明書を数通取っておきます。年金事務所、都道府県、金融機関など、このあと出す先の多くで求められるためです。法務省によると、法人番号指定通知書は原則として登記完了日の2稼働日後に国税庁から発送されます。登記や印鑑の扱いは 登記・印鑑・契約 のカテゴリーで整理しています。
年金事務所への届出は5日以内
法人は社長1人でも、報酬を払う限り健康保険・厚生年金保険の適用事業所になります。日本年金機構は新規適用届の期限を「事実発生から5日以内」としており、設立後の手続きの中でいちばん早く来ます。社長本人の資格取得届、家族を扶養に入れるなら被扶養者の届も同時に出します。加入の考え方は 社会保険・労働保険 のカテゴリーにまとめています。
1か月目:給与を払う準備と、会社のお金の通り道をつくる
役員報酬を払う会社は給与支払事務所等の開設届
役員報酬も源泉徴収の対象になる給与です。給与の支払事務を行う事務所を開設した日から1か月以内に、税務署へ給与支払事務所等の開設届出書を出します。源泉徴収した所得税は原則として翌月10日までに納めますが、給与を受ける人が常時10人未満なら年2回にまとめる特例もあります。税務署に出す届出の詳細は 会社設立後に税務署へ出す届出 で解説しています。
法人口座を開き、社長個人のお金と分ける
法人口座は審査に時間がかかることがあるため、登記事項証明書が取れたらすぐに申し込みます。口座ができたら、売上の入金も経費の支払いも会社の口座とカードに寄せ、社長の私的な支出は役員報酬から払う形にそろえます。最初にこの通り道を決めておくと、あとの記帳と資金繰りの確認が楽になります。詳しくは 法人口座・お金の管理 を参照してください。
2か月目まで:設立の届出を3か所へ出す
会社をつくったことは、国税は税務署へ、地方税は都道府県税事務所と市区町村へ、それぞれ届け出ます。税務署は設立から2か月以内ですが、地方税の期限は自治体ごとに決まっていて、東京都は15日以内と短めです。東京23区に本店がある会社は、都税事務所に出せば区への提出は要りません。
提出先が多くて手間に感じるなら、マイナポータルの法人設立ワンストップサービスを使うと、国税・地方税・年金事務所・ハローワークなどの届出をオンラインでまとめて出せます。提出先ごとの一覧は 会社設立後の手続き にまとめました。
3か月目まで:青色申告と役員報酬を決め切る
青色申告の承認申請は期限の数え方に注意
1期目から青色申告にするには、設立の日以後3か月を経過した日と第1期の末日のうち、早いほうの前日までに申請します。設立から決算日までが短い会社は、3か月より前に締め切りが来ます。間に合わないと1期目は白色申告になり、1期目の赤字を翌期以降に繰り越せません。
役員報酬は社会保険料とセットで決める
役員報酬は、事業年度の開始から3か月以内に額を決め、その期は毎月同じ額を払うのが原則です。途中で変えると、その分が損金(法人税の計算で経費として差し引けるもの)に入らないことがあります。報酬の額は社会保険料の額も決めます。2026年4月分からは健康保険料に子ども・子育て支援金が上乗せされ、協会けんぽでは0.23%を会社と本人で折半します。決め方の手順は 役員報酬の決め方 を参照してください。
1期目のうちに判断すること:消費税と記帳の型
消費税は、資本金1,000万円未満の会社なら設立当初は納めなくてよい場合が多い税金です。ただし、設備投資が大きく還付を受けたい会社、取引先からインボイスの登録を求められる会社、簡易課税を使いたい会社は、第1期の末日までに届出を出すかどうかを決めます。インボイスの2割特例は、法人は2026年9月30日を含む課税期間で終わっており、これから設立する会社は使えません。判断の材料は税務署の届出の記事で詳しく扱っています。
記帳は、決算の直前にまとめてやろうとすると1年分の領収書を一度に処理することになります。設立した月から、口座とカードの明細を会計ソフトに取り込み、月に1回は残高と入金予定を確かめる習慣をつくってください。会計や税務の考え方は 会計・税務・役員報酬 のカテゴリーにあります。
人を雇う会社、許認可が要る会社は手続きが増える
従業員を1人でも雇うと、労働基準監督署に労働保険の保険関係成立届(成立した日から10日以内)、ハローワークに雇用保険の適用事業所設置届(設置の翌日から10日以内)が加わります。社長と役員だけの会社なら、この2つはまだ要りません。
建設業、不動産、人材紹介、飲食店などは、許可や届出が済むまで営業を始められません。審査に数週間から数か月かかるものが多いので、登記が終わったらすぐに確認します。業種ごとの要件は 業種別の許認可、事務所の条件は 事務所・本店所在地、創業融資や補助金は 資金調達・補助金・創業支援 にまとめています。
期限は人ではなく一覧で管理する
設立直後に届出が漏れる原因は、ほとんどが「忙しいので後で」です。誰が・いつまでに・どこへ出すかを一覧にし、出したら控えを保管して印をつけます。印刷して使える一覧は 設立後90日チェックリスト で配布しています。
役員報酬の額や消費税の選択のように、数字の試算が要る判断は税理士に確認してから決める会社が多い部分です。設立直後から相談できる税理士の探し方は、税理士コンシェルジュ で整理しています。
よくある質問
法人番号はいつわかりますか
法人番号は、原則として登記完了日の2稼働日後に国税庁から発送される法人番号指定通知書でわかります。通知書は登記した本店の所在地に届きます。届く前でも、国税庁の法人番号公表サイトで商号や所在地から検索すれば確認できる場合があり、法務省は登記完了日の16時または翌稼働日の11時に公表されるのが原則としています。社会保険の新規適用届など法人番号を書く届出があるので、通知書は控えと一緒に保管してください。
90日の中でいちばん優先すべきものは何ですか
いちばん優先すべきなのは、期限が5日以内と最も短い年金事務所への新規適用届です。次に1か月以内の給与支払事務所等の開設届出書、2か月以内の法人設立届出書、3か月以内の青色申告の承認申請書と役員報酬の決定が順に続きます。役員報酬と青色申告は、期限を過ぎるとその期の中では取り返しがつかないため、とりわけ重要です。期限が短いものから順に片づけ、空いた時間を後半の判断に回すと、届出の抜けが出にくくなります。
設立直後の資金繰りで気をつけることは何ですか
設立直後は、利益が出ていても手元の現金が足りなくなることに気をつけます。売上の入金は翌月や翌々月になる一方で、家賃や仕入、役員報酬の支払いは先に来るためです。毎月の固定の支出を書き出し、確定している入金予定と並べて、月末の残高を先に見積もっておきます。残高が固定の支出の数か月分を下回りそうなら、早めに融資や支払条件の見直しを検討します。創業融資の情報は資金調達・補助金・創業支援のカテゴリーにまとめています。
