法人成りのデメリットと注意点、会社設立後に増える社会保険料・均等割・事務負担

法人成りのデメリットは、社会保険料が会社と本人の両方にかかること、赤字でも毎年かかる均等割、決算や給与計算などの事務、会社のお金を自由に引き出せないことの4つが中心で、利益がまだ薄い段階ほど重くなります。
法人成りで後悔する人の多くは、節税の話を先に聞き、負担の側を設立後に知っています。社会保険料や均等割は利益の有無に関係なく出ていき、決算や給与計算は個人事業の確定申告より手間がかかります。さらに、会社の口座にあるお金は会社のもので、個人事業のときのように必要な分を自由に引き出すことはできません。この記事では、既に売上がある個人事業主が法人成りしたときに増える負担を、2026年10月時点の料率と制度で具体的に整理し、負担が重くなる典型的な状況も挙げます。会社にする利点は法人成りのメリットで扱っているので、同じ数字を前提に比べてください。
社会保険料が会社と本人の両方にかかる
株式会社などの法人の事業所は、事業主1人だけの場合も健康保険・厚生年金の適用事業所になります。社長が役員報酬を受け取れば、従業員がいなくても加入します。保険料は報酬の額(標準報酬月額)に料率をかけて計算し、会社と本人が半分ずつ負担します。
| 保険料 | 料率(会社と本人の合計) | 適用 |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ東京支部) | 9.85% | 2026年3月分から。都道府県ごとに異なり、神奈川県は9.92% |
| 介護保険 | 1.62% | 40歳から64歳の人のみ |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 2026年4月分から上乗せ |
| 厚生年金 | 18.3% | 全国一律 |
たとえば東京で、標準報酬月額50万円、40歳未満の社長なら、合計は28.38%で月14万1,900円、そのうち本人負担と会社負担がそれぞれ7万950円です。40歳から64歳なら介護保険料が加わって合計30%、月15万円になります。個人事業の国民年金は2026年度で月17,920円なので、国民健康保険料を合わせても、会社負担分を含めた総額は増えることが多くなります。
個人事業のときに従業員が5人未満で社会保険に入っていなかった場合は、従業員も加入の対象になり、会社負担はさらに増えます。保険料は将来の厚生年金や病気のときの手当にもつながりますが、毎月の資金繰りに確実に効いてきます。役員報酬と保険料の関係は設立時の役員報酬と社会保険料で詳しく扱っています。
赤字の年にもかかる税金と申告
会社には、利益がなくても毎年かかる法人住民税の均等割があります。東京23区に事務所だけがある会社で、資本金等の額が1,000万円以下、従業者が50人以下なら年7万円です。ほかの地域でも、都道府県分と市町村分を合わせて同じ程度の額がかかり、自治体によって上乗せされていることもあります。
また、2026年4月1日以後に始まる事業年度からは防衛特別法人税が加わりました。法人税額から年500万円を差し引いた残りに4%なので、小さな会社では税額が出ないことが多いものの、税額が0でも申告書の提出が必要です。法人税の申告は税務署に、法人住民税と法人事業税の申告は都道府県と市区町村に出すため、申告先も個人事業より増えます。
決算と給与計算の事務が増える
会社にすると、毎年の決算で貸借対照表と損益計算書をつくり、法人税などの申告書を事業年度終了後に提出します。個人事業の青色申告より、帳簿の正確さが求められる範囲が広がります。
社長に役員報酬を払うので、毎月の給与計算、所得税の源泉徴収と納付、年末調整も会社の仕事になります。給与を払う人が常時10人未満なら、源泉所得税の納付を年2回にまとめる納期の特例を申請できますが、計算そのものは毎月発生します。社会保険でも、毎年の届出や、役員報酬を変えたときの届出が必要です。
登記の手間もあります。株式会社の役員には任期があり、同じ人が続ける場合でも任期が来るたびに登記が必要です。本店の移転や役員の住所変更も登記の対象になります。登記の手続きは登記・印鑑・契約のカテゴリーを参照してください。
会社のお金を自由に引き出せない
個人事業では、事業の利益をそのまま生活費に回せました。会社では、社長が受け取れるのは決めた役員報酬だけです。役員報酬は原則として事業年度の初めから3か月以内に額を決め、その期は毎月同じ額にする必要があり、期の途中で増やした分は会社の経費になりません。臨時の賞与も、事前に税務署へ届け出た額どおりに払わないと経費にできません。
生活費が足りないからといって会社の口座から引き出すと、会社から社長への貸付金として扱われ、返済や利息の説明が必要になります。法人成りの前に、毎月の生活費と、役員報酬から社会保険料と税金を引いた手取りが釣り合うかを確かめてください。会社と個人のお金の分け方は法人口座・お金の管理のカテゴリーにまとめています。
設立と維持にかかるお金
会社の設立には、登記の登録免許税として資本金の1,000分の7がかかり、最低額は株式会社が15万円、合同会社が6万円です。株式会社はさらに公証役場で定款の認証を受ける手数料がかかり、資本金の額によって変わります。設立後も、決算や申告を外部に頼むならその費用、役員の任期ごとの登記費用などが続きます。
やめるときも手続きが要る
個人事業は廃業の届出で閉じられますが、会社をやめるには、解散と清算の登記をし、解散時と清算時の申告をする必要があります。「試しに会社にして、合わなければ個人に戻す」という進め方は、手間と費用の面で簡単ではありません。
デメリットが重くなる典型的な状況
- 利益が薄いうちに法人成りした:社会保険料と均等割が先に出ていき、手元の現金が減ります。
- 役員報酬を高く決めすぎた:会社に現金が残らず、期の途中で下げることもできないまま資金繰りが苦しくなります。
- 経理の担い手を決めずに設立した:個人と会社の取引が混ざったまま決算を迎え、締めの作業に追われます。
どれも、設立前に役員報酬と保険料の試算をし、記帳の担い手を決めておけば避けやすい失敗です。試算や申告を税理士に頼むかどうかの考え方は税理士コンシェルジュの解説を参照してください。判断の時期そのものは法人成りのタイミングで整理しています。
よくある質問
法人成りすると赤字でも税金はかかりますか?
赤字でも、法人住民税の均等割は毎年かかります。均等割は利益ではなく、資本金等の額と従業者数で決まる定額の税金だからです。東京23区に事務所だけがある会社で、資本金等の額が1,000万円以下、従業者が50人以下なら年7万円です。ほかの地域でも同じ程度の額がかかります。また、2026年4月1日以後に始まる事業年度からは、防衛特別法人税の税額が0でも申告書の提出が必要です。赤字の年も、申告と納付の準備は欠かせません。
社長1人の会社でも社会保険に入らないといけませんか?
役員報酬を受け取るなら、社長1人の会社でも健康保険と厚生年金に入ります。法人の事業所は事業主のみの場合も適用事業所になるためです。保険料は報酬の額に料率をかけて計算し、会社と本人が半分ずつ負担します。協会けんぽ東京支部では、健康保険料率9.85%、子ども・子育て支援金率0.23%、厚生年金保険料率18.3%で、合計はおよそ28%台です。40歳から64歳は介護保険料率1.62%が加わります。国民年金と国民健康保険から切り替わる点を見込んでおきます。
会社のお金を生活費に使ってもいいですか?
会社のお金を社長が生活費に使うことはできず、使えるのは決めた役員報酬の範囲です。会社の口座にあるお金は会社のもので、個人事業のように自由に引き出すと、会社から社長への貸付金として扱われます。役員報酬は原則として事業年度の初めから3か月以内に決め、その期は毎月同じ額にするため、途中で足りなくなっても簡単には増やせません。法人成りの前に、報酬から税金と社会保険料を引いた手取りで生活できるかを確かめておきます。
