設立時の役員報酬と社会保険料、社長1人の会社でも加入し負担は報酬の約3割

設立時から役員報酬を払うなら、社長1人の会社でも健康保険・厚生年金に入り、保険料は会社と本人の合計で報酬のおよそ3割かかります。
| 手続き | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険の新規適用届(会社の加入) | 事実発生から5日以内 | 年金事務所または事務センター |
| 被保険者資格取得届(社長本人の加入) | 事実発生から5日以内 | 年金事務所または事務センター |
会社を作って社長が役員報酬を受け取ると、従業員がいなくても会社の健康保険・厚生年金に入ることになります。保険料は報酬の額で決まり、会社と本人で半分ずつ負担します。2026年4月分からは子ども・子育て支援金も上乗せされました。役員報酬の額を考えるときは税金に目が向きがちですが、設立1期目の会社にとっては、毎月出ていく保険料の方が重く感じられることもあります。この記事では、設立時の役員報酬と社会保険料の関係に絞って、加入の条件、報酬0円の扱い、2026年度の料率と保険料の目安を整理します。
社長1人の会社でも加入する理由
法人の事業所は、事業主のみの場合も含めて健康保険・厚生年金の適用事業所になります。従業員を雇っていなくても、会社そのものが加入の対象です。
社長本人が被保険者になるかどうかは、報酬を受けているかで決まります。厚生労働省が2026年3月18日付で出した通知では、法人の役員について、法人から労務の対価として報酬を受けている人は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得させる扱いが改めて示されています。判断の目安は、業務が経営への参画として継続的に行われているか、報酬がその対価として継続的に払われているか、の2点です。
加入の手続きと期限
会社の加入は新規適用届、社長本人の加入は被保険者資格取得届で、どちらも事実発生から5日以内に年金事務所または事務センターへ出します。新規適用届には、提出日からさかのぼって90日以内に発行された登記簿謄本(コピー不可)を付けます。手続きの流れは社会保険・労働保険のカテゴリーにまとめています。
報酬0円の間は会社の社会保険に入れない
役員報酬を0円にすると、報酬を受けていないので社長は被保険者になりません。この間は社長個人で市区町村の国民健康保険と国民年金に入るか、前の勤め先の健康保険を任意継続します。
0円で始めて途中から報酬を払うと、払い始めた時点で会社の社会保険に入ります。ただし税務上は、設立日から3か月を経過する日までに月額を決めておかないと、途中から払った報酬を損金にできません。期限と議事録は設立後、役員報酬をいつまでに決めるかで確認してください。
0円にすれば保険料が軽くなるとは限らない
国民健康保険の保険料は市区町村ごとに決まり、前年の所得をもとに計算されます。会社員を辞めて設立した直後は前年の給与で計算されるため、思ったほど下がらないことがあります。国民年金は定額で、将来の年金は厚生年金に入った場合より少なくなります。0円にするかどうかは、保険料だけでなく1期目の生活費と合わせて考えます。
保険料を決める標準報酬月額
社会保険料は、報酬の額そのものではなく、報酬を一定の幅ごとに区切った標準報酬月額に料率をかけて計算します。たとえば報酬が月29万円以上31万円未満なら、標準報酬月額は30万円です。
健康保険の標準報酬月額は5万8千円から139万円までの50等級、厚生年金は8万8千円から65万円までの32等級です。厚生年金は65万円が上限なので、報酬がそれを超えても厚生年金の保険料は増えません。反対に下限もあり、報酬が月9万3千円未満なら8万8千円として計算されます。
設立時に決まった額はいつまで使われるか
設立して資格を取ったときの標準報酬月額は、取得した月からその年の8月まで使われます。6月1日から12月31日の間に取った場合は翌年の8月までです。その後は毎年4月から6月の報酬で見直され、9月から翌年8月まで適用されます。役員報酬は期中に変えないのが原則なので、1期目は設立時に決めた月額で保険料がほぼ固定されます。
2026年度の料率と月30万円の保険料
協会けんぽ(中小企業の多くが入る健康保険)の2026年度の料率は、3月分(4月納付分)から次のとおりです。厚生年金と子ども・子育て拠出金の率もあわせて載せます。
| 項目 | 料率 | 負担 |
|---|---|---|
| 健康保険料(東京都) | 9.85% | 会社と本人で折半 |
| 健康保険料(神奈川県) | 9.92% | 会社と本人で折半 |
| 健康保険料(大阪府) | 10.13% | 会社と本人で折半 |
| 介護保険料(40歳から64歳) | 1.62% | 会社と本人で折半 |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月分から) | 0.23% | 会社と本人で折半 |
| 厚生年金保険料 | 18.3% | 会社と本人で折半 |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 会社のみ |
健康保険料率は都道府県ごとに違い、2026年度は新潟県の9.21%から佐賀県の10.55%までの幅があります。
東京都・報酬月30万円で計算すると
| 項目 | 労使合計 | 本人負担 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 29,550円 | 14,775円 |
| 介護保険料(40歳から64歳のみ) | 4,860円 | 2,430円 |
| 子ども・子育て支援金 | 690円 | 345円 |
| 厚生年金保険料 | 54,900円 | 27,450円 |
| 子ども・子育て拠出金 | 1,080円 | 0円 |
40歳未満なら労使合計で月86,220円(報酬の約29%)、40歳から64歳なら月91,080円(約30%)です。本人負担は40歳未満で42,570円、40歳から64歳で45,000円になります。社会保険料は労使合計で報酬の約3割、というのはこの計算から来ています。
子ども・子育て支援金で増えた負担
子ども・子育て支援金は、2026年4月分(5月納付分)から健康保険料に上乗せして集められている拠出です。協会けんぽでは全国一律0.23%で、会社と本人が半分ずつ負担します。月30万円の報酬なら労使合計で月690円です。名前の似た子ども・子育て拠出金は以前からあるもので、こちらは会社だけが負担します。
報酬額を決めるときの保険料の見方
会社負担分は会社の損金になり、本人負担分は社長の所得から社会保険料控除として差し引かれます。それでも、報酬の約3割が毎月現金で出ていくことは変わりません。設立1期目は売上が安定しないので、報酬額を決める前に、会社負担分を含めた総額を毎月払い続けられるかを確かめます。
一方で、保険料を減らすためだけに報酬を下げると、会社に利益が残って法人税がかかります。保険料は将来の年金や病気のときの保障にもつながるので、法人税・所得税と並べて判断します。3つの案での比べ方は設立1期目の役員報酬の決め方で扱っています。期中の変更や2期目以降の見直しは税理士コンシェルジュの役員報酬の解説を参照してください。
よくある質問
社長1人の会社でも社会保険に入らないといけませんか?
役員報酬を受け取るなら、社長1人の会社でも健康保険と厚生年金に入ります。法人の事業所は事業主のみの場合も適用事業所になり、法人から労務の対価として報酬を受けている役員は被保険者になるためです。会社の新規適用届と社長本人の資格取得届を、事実発生から5日以内に年金事務所か事務センターへ出します。新規適用届には、90日以内に発行された登記簿謄本を付けます。従業員がいないことは加入しない理由になりません。
役員報酬0円なら社会保険はどうなりますか?
役員報酬が0円の間は、会社の健康保険・厚生年金には入れません。報酬を受けていない役員は被保険者にならないためです。その間は社長個人で市区町村の国民健康保険と国民年金に入るか、前の勤め先の健康保険を任意継続します。途中から報酬を払うと、その時点で会社の社会保険に入ります。ただし税務上は、設立日から3か月を経過する日までに月額を決めておく必要があります。0円の期間をどう過ごすかは、保険料と生活費の両方から考えます。
子ども・子育て支援金は会社と社長のどちらが払いますか?
子ども・子育て支援金は、会社と社長が半分ずつ負担します。2026年4月分から健康保険料に上乗せされ、協会けんぽでは全国一律で標準報酬月額の0.23%です。月30万円の報酬なら労使合計で月690円、本人負担は345円です。名前の似た子ども・子育て拠出金は標準報酬月額の0.36%で、こちらは会社だけが負担し、社長の報酬からは差し引きません。どちらも会社が毎月まとめて納めます。報酬を決めるときは、この会社負担分も含めて資金を見込みます。
