設立後の記帳・経理を自分で始める方法と、会計ソフト選び・電子帳簿保存法の対応

設立後の記帳は、会計ソフトを決めて法人口座・カードを連携し、領収書と請求書の保存ルールを決め、毎月1回締める流れをつくれば、自分で始められます。
| 経理で守る期限 | 中身 |
|---|---|
| 帳簿・書類の保存 | 申告期限の翌日から原則7年(青色申告で赤字が出た期は10年) |
| 源泉所得税の納付 | 給与を支払った月の翌月10日(納期の特例を受けると年2回) |
| 決算・申告 | 決算日の翌日から2か月以内 |
会社を設立すると、個人のときより経理の決まりごとが増えます。売上や経費を複式簿記(1つの取引を2つの面から記録する方法)でつけ、決算書を作り、帳簿と領収書を7年間残す必要があります。とはいえ、設立直後は取引の数が少なく、最初に仕組みを作っておけば社長1人でも回せます。この記事では、記帳を始める前に決めること、会計ソフトを選ぶときの観点、口座・カード連携の注意点、電子帳簿保存法への対応、毎月の流れまでを順に整理します。自分で続けるのが重くなったときの考え方も最後に触れます。最初の1か月で仕組みを作っておけば、1期目の決算もぐっと楽になります。
記帳を始める前に決めておくこと
会社のお金と社長のお金を分ける
記帳を楽にする一番の近道は、会社の支払いをすべて法人口座と法人カードに集めることです。社長個人のカードで会社の経費を払うと、立替精算の記録が必要になり、帳簿に社長との貸し借り(役員借入金・役員貸付金)が増えていきます。口座開設がまだの場合は法人口座・お金の管理から進めてください。
開始時点の数字を確かめる
帳簿は設立日から始まります。資本金として払い込んだお金、設立登記にかかった費用、設立前に社長が立て替えた費用を最初に入力します。設立前の費用には、創立費・開業費として会社の経費にできるものがあるため、領収書を捨てずにまとめておきます。
消費税の扱いを決める
会計ソフトの初期設定では、消費税の課税事業者か免税事業者か、インボイス発行事業者の登録をするか、税込みで記帳するか税抜きで記帳するかを選びます。1期目に消費税がかかるかどうかは、資本金の額やインボイス登録の有無で変わります。判断の流れは設立1期目の決算と申告を自分でやるときの流れで整理しています。
会計ソフトを選ぶときの観点
製品の名前で選ぶより、自社の取引に合うかで選ぶほうが失敗しません。次の観点で比べてください。
| 観点 | 確かめること |
|---|---|
| 法人で使えるか | 法人向けのプランで、決算書(貸借対照表・損益計算書)まで作れるか |
| 連携できる先 | 使っている銀行・カード・決済サービスの明細を自動で取り込めるか |
| 請求書とインボイス | 登録番号や税率ごとの消費税を載せた請求書を発行でき、売上の記帳とつながるか |
| 証憑の保存 | 領収書や請求書のデータを取引と紐づけて保存し、日付・金額・取引先で検索できるか |
| 給与・申告との連携 | 人を雇ったときの給与計算や、法人税の申告書作成ソフトとデータをやり取りできるか |
| 共有と引き継ぎ | 税理士や外部の経理担当者とデータを共有できるか、将来ほかへ移すときにデータを書き出せるか |
インターネット上で使うクラウド型は、明細の自動取込みと外部との共有に強く、パソコンに入れるインストール型は、オフラインで動き操作が速いという違いがあります。後から外部の人に記帳を任せる可能性があるなら、共有しやすさを重く見ておくと移行の手間が減ります。
口座・カード連携の設定と落とし穴
連携を設定すると、法人口座とカードの明細が会計ソフトに自動で取り込まれます。ただし、取り込まれるのは日付・金額・相手先の情報までで、勘定科目は自分で決める必要があります。よく出てくる取引は自動で仕訳する規則(ルール)を登録しておくと、毎月の作業が大きく減ります。
- 自動仕訳は最初の数か月、結果が正しいかを必ず目で確かめる
- 口座間の資金移動やカードの引落しは、経費の二重計上になりやすい
- 現金払いは連携では拾えないため、できるだけ減らして手入力の件数を絞る
- 連携が切れて明細が止まることがあるので、月末に取込みが最新かを見る
領収書・請求書の保存と電子帳簿保存法
紙で受け取ったものは紙のままでよい
紙の領収書や請求書は、紙のまま保存できます。スキャンしてデータで保存する方法(スキャナ保存)もありますが、決められた要件を満たす必要があり、選ぶかどうかは会社の自由です。月ごとに封筒やファイルにまとめるだけでも、決算や税務調査のときに探しやすくなります。
メールやネットで受け取ったものはデータで残す
メールに添付されたPDFの請求書や、ネット通販でダウンロードする領収書は、電子取引のデータとして、データのまま保存しなければなりません。紙での保存を認めていた経過措置は2023年12月末で終わっています。紙に印刷して残すだけでは足りません。守るべき点は次の2つです。
- 勝手に訂正・削除しないためのルールとして、事務処理規程を作って守る(国税庁がひな形を公開しています)
- 日付・金額・取引先で探せるようにする(ファイル名を「日付_取引先_金額」にそろえる、会計ソフトの保存機能を使う など)
前々事業年度の売上高が5,000万円以下の会社は、税務調査でデータの提出を求められたときに応じられれば、検索できるようにする要件が不要になります。ただし設立直後は判定のもとになる事業年度がないため、最初から探せる形で保存しておくほうが確実です。
発行した請求書の控えも残す
自社が発行した請求書の控えも保存の対象です。会計ソフトや請求書作成サービスで発行すれば、控えのデータが自動で残ります。インボイス発行事業者になった場合は、発行したインボイスの写しも保存します。
毎月の経理の流れを決める
経理が崩れる原因の多くは、月をまたいで作業がたまることです。次のように、やる日を決めておくと続けやすくなります。
| いつ | やること |
|---|---|
| 受け取ったその日 | 領収書・請求書を会計ソフトに保存するか、月の封筒に入れる |
| 月初の数日 | 前月分の口座・カード明細を確認して仕訳を確定する。現金払いと立替経費を入力する |
| 月初から10日まで | 給与を払っている場合は源泉所得税を納める(納期の特例を受けていれば年2回) |
| 月の半ば | 請求書を発行し、売掛金の入金を確かめて請求漏れや入金遅れを洗い出す |
| 月末 | 帳簿の預金残高と通帳残高を合わせ、試算表(月ごとの損益と残高の一覧)を見る |
試算表を毎月見る習慣がつくと、決算前に慌てることがなくなり、役員報酬や納税資金の見通しも立てやすくなります。
自分で続けるのが重くなる場面
次のような会社は、最初から、または早めに経理の一部を外に出すほうが本業に集中できます。
- 個人事業から法人成りして、設立時点ですでに取引が多い
- 従業員を雇い始め、給与計算や源泉所得税の処理が加わった
- 会計ソフトの導入や、別のソフトからの移行を誰かに任せたい
- 経理担当者がいない、または担当者が辞めてしまった
外に出す方法には、仕訳の入力だけを任せる記帳代行と、請求・支払・給与まで含めて任せる経理代行があります。どちらの場合も、法人口座への集約と証憑の保存ルールが整っていれば、引き継ぎはスムーズに進みます。
よくある質問
設立したばかりの会社でも記帳は自分でできますか?
取引がまだ少ない設立直後なら、会計ソフトを使って自分で記帳を始められます。法人口座と法人カードを事業専用にして会計ソフトと連携すれば、明細は自動で取り込まれ、毎月の作業は取り込んだ明細の確認と、現金払いや立替経費の入力が中心になります。大切なのは月に1回は必ず締めて、帳簿の預金残高と通帳残高を合わせることです。取引が増えて締めが翌月に間に合わなくなったら、記帳を外に出すことを考える時期です。まずは月初の数日を経理の日と決めてしまうのが、続けるコツです。
電子帳簿保存法には何を対応すればよいですか?
最低限必要なのは、メールやネットで受け取った請求書・領収書をデータのまま保存することです。紙に印刷して残すだけでは足りません。そのうえで、訂正や削除を勝手にしないための事務処理規程を作り、日付・金額・取引先で探せるようにファイル名の付け方を決めるか、会計ソフトの保存機能を使います。紙で受け取った領収書は紙のまま保存してかまいません。保存期間は原則7年で、事務処理規程のひな形は国税庁のホームページにあります。
会計ソフトはいつまでに決めればよいですか?
最初の取引が始まる前、遅くとも設立した月のうちに決めるのが理想です。法人口座やカードの明細は過去の分もさかのぼって取り込めることが多いものの、数か月分をまとめて処理すると、領収書の紛失や勘定科目の迷いが一気に出てきます。消費税の扱いやインボイス登録の有無もソフトの初期設定に関わるため、先に決めておくと後で直す手間が減ります。決算の前に乗り換えると移行作業が重くなるので、最初の選択を慎重にしてください。
