設立後の役員報酬はいつまでに決める?設立から3か月の期限と議事録の作り方

設立1期目の役員報酬は、設立日から3か月を経過する日までに株主総会で月額を決めて議事録を残し、その後は毎月同じ額を払います。
| やること | 期限 | 提出先・残すもの |
|---|---|---|
| 役員報酬の月額を決議する | 設立日から3か月を経過する日まで | 株主総会議事録(会社で保管) |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の事実があった日から1か月以内 | 所轄の税務署 |
| 健康保険・厚生年金保険の新規適用届 | 事実発生から5日以内 | 年金事務所または事務センター |
会社を作ると、社長自身の給料である役員報酬を、いつ、どの手続きで決めるかが最初の判断になります。役員報酬は会社の経費(税務では「損金」といいます)にできますが、それには毎月同じ額を払う定期同額給与の形にし、決める時期の期限を守ることが条件です。この期限は設立日から数えるため、登記や口座開設に追われているうちに過ぎてしまう社長が少なくありません。この記事では設立1期目に絞って、期限の数え方、株主総会の決議と議事録の作り方、報酬0円で始める場合の扱いを整理します。月額をいくらにするかは別の記事で扱います。
期限は設立日から3か月を経過する日まで
国税庁は、定期同額給与の額を改定できる時期を、事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日(「3月経過日等」といいます)までとしています。設立1期目の会計期間は設立日から始まるので、期限は設立日から3か月を経過する日です。
期限の数え方の例
たとえば2026年12月1日に設立した会社なら、2027年2月28日が期限です。株式会社は設立の登記をした日に成立するので、定款を作った日ではなく、登記簿に載る会社成立の年月日から数えます。
確定申告書の提出期限を延ばす特例を受けている会社は数え方が変わりますが、設立したばかりの会社では通常当てはまりません。
定期同額給与とは
定期同額給与は、1か月以下の一定の期間ごとに払い、その事業年度の各支給時期の支給額が同じ給与です。期限内に月額を決め、その後の毎月の支給額がそろっていれば、払った役員報酬を損金にできます。源泉所得税や社会保険料を差し引いた後の手取りが毎月同じ場合も、同額として扱われます。
3か月を過ぎてから決めるとどうなるか
期限を過ぎてから月額を上げると定期同額給与の要件から外れ、払った額の一部が損金になりません。会社の法人税は減らないのに、社長個人には所得税・住民税がかかるため、同じお金に会社と個人の両方で税金を払う形になります。
期限後に月額を変えられるのは、役職が変わった、職務の内容が大きく変わった、経営状況が著しく悪化した、といった場合に限られます。一時的な資金繰りの都合や、業績が目標に届かなかったことは理由になりません。期中の変更や2期目以降の見直しの判断は、税理士コンシェルジュの役員報酬の解説で確認してください。
誰が決め、何を書き残すか
株式会社は株主総会で決める
取締役の報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます(会社法361条)。株主総会では取締役全員の報酬の総額の上限だけを決め、一人ひとりへの配分を取締役会などに任せる方法もあります。合同会社の場合は、定款の定めや社員の同意など、その会社の決め方に沿って記録を残します。
社長1人が株主と取締役を兼ねている会社でも、決議の記録は省けません。自分で決めて自分に払うからこそ、いつ、いくらに決めたかを書面で示せるようにしておきます。
議事録に書く項目
- 開催の日時と場所
- 株主の総数と議決権の数、出席した株主の議決権の数
- 議長と議事録の作成者
- 決議の内容(例:取締役(氏名)の報酬を月額(金額)円とする)
- いつの分から払うか(例:2027年1月分から)
- 支給日(例:毎月25日)
議事録は税務署に出す書類ではなく、会社で保管する書類です。税務調査では、期限内に月額を決めたことを示す資料になります。決議の日と作成の日がずれないよう決議したその日に作り、毎月の振込記録と一緒に残しておくと、同じ額で払い続けたことも示せます。
報酬0円で始める場合の扱い
1期目は売上の見通しが立たないため、報酬を0円で始める社長もいます。0円にすること自体は問題ありません。気をつけるのは、いつまでに払う額を決めるかです。
3か月以内に払い始めるなら
設立直後は0円でも、設立日から3か月を経過する日までに株主総会で月額と開始月を決め、その月以降を毎月同じ額にすれば、期限内に決めた報酬として扱えます。0円の期間を置くことも含めて、決議した内容を議事録に残します。
3か月を過ぎても0円のままなら
期限を過ぎると、その事業年度の途中から報酬を払い始めても損金にできません。この場合は1期目を0円のまま終え、2期目の期首から3か月以内に改めて決めます。
報酬0円の間は会社の健康保険・厚生年金に入れないため、社長個人で国民健康保険と国民年金に入ります。保険料との関係は設立時の役員報酬と社会保険料で整理しています。
決議と同じ時期に出す届出
役員報酬を払う会社は、給与を払う事務所として税務署に給与支払事務所等の開設届出書を出します。期限は開設の事実があった日から1か月以内です。税務署・都道府県・市区町村への届出の全体は届出のカテゴリーにまとめています。
報酬を払い始めると、社長1人でも健康保険・厚生年金の手続きが要ります。会社の新規適用届と社長本人の資格取得届は、どちらも事実発生から5日以内です。手続きの流れは社会保険・労働保険のカテゴリーで確認できます。
3か月で決議まで終える段取り
- 設立から1か月以内:1期目の売上と経費の見込み、会社に残す現金を出す
- 2か月目まで:月額の候補を絞る(決め方は設立1期目の役員報酬の決め方)
- 3か月を経過する日の前まで:株主総会で決議し、その日に議事録を作る
- 決議した月以降:毎月同じ日に同じ額を振り込む
期限の直前に決めると、月額を比べる時間がなくなります。設立の登記が終わったら、まず期限の日を予定表に入れ、その2週間ほど前を株主総会の予定日にしておきます。期限の早い手続きをまとめて確認したい方は、設立後90日チェックリストを使ってください。
よくある質問
役員報酬は毎月同額でないとだめですか?
設立1期目は、決めた月以降を毎月同じ額で払うのが原則です。定期同額給与は1か月以下の一定期間ごとに払い、各支給時期の額が同じ給与のことで、これに当たれば会社の損金にできます。源泉所得税などを引いた手取りが毎月同じ場合も同額として扱われます。月によって額を変えると要件から外れ、払った額の一部が損金になりません。賞与のように特定の月だけ多く払うには、税務署への事前の届出が別に必要です。迷ったら、決めた月額を1年間変えない前提で考えておくと安全です。
1期目は役員報酬0円でもいいですか?
0円でも問題ありません。ただし設立日から3か月を経過する日を過ぎると、その期の途中から払い始めても損金にできません。0円で始めて途中から払う予定なら、期限内に株主総会で月額と開始月を決めて議事録に残します。期限を過ぎたら1期目は0円のまま終え、2期目の期首から3か月以内に決め直します。0円の間は会社の社会保険に入れず、社長個人で国民健康保険と国民年金に入ります。0円の期間をどれだけ置くかも、期限内に決めておきます。
役員報酬の議事録はどこかに提出するのですか?
役員報酬の議事録は、税務署などに提出する書類ではなく会社で保管する書類です。税務調査では、期限内に月額を決めたことを示す資料として確認されます。決議の日付、金額、いつの分から払うか、支給日を書き、決議したその日に作ります。株主と取締役が社長1人だけの会社でも作っておきます。毎月の振込記録と一緒に残しておくと、同じ額で払い続けたことも示せます。決議を口頭で済ませると、期限内に決めた証拠が残らないので注意してください。
