設立1期目の決算と申告を自分でやるときの流れと、期限・申告先の注意点

設立1期目の決算・申告は、決算日の翌日から2か月以内に、税務署と都道府県・市区町村へ申告書を出して税金を納めれば、自分でも完結できます。
| 申告するもの | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 法人税・地方法人税・防衛特別法人税 | 所轄の税務署(e-Tax) | 決算日の翌日から2か月以内 |
| 法人事業税・特別法人事業税・法人住民税 | 都道府県税事務所と市区町村(東京23区は都税事務所のみ)(eLTAX) | 決算日の翌日から2か月以内 |
| 消費税・地方消費税(課税事業者だけ) | 所轄の税務署(e-Tax) | 決算日の翌日から2か月以内 |
| 上記の税金の納付 | 金融機関・ダイレクト納付・地方税共通納税など | 申告の期限と同じ |
設立1期目は、決算も申告も初めてです。何から手を付ければよいか分からないまま決算月を迎え、2か月の期限が迫ってから慌てる社長は少なくありません。1期目の申告は、帳簿を締めて決算書を作り、国の税金と地方の税金の申告書を出し、期限までに納めるという順番で進みます。1期目には中間申告がない一方で、赤字でも均等割を納める、2026年4月1日以後に始まる事業年度から防衛特別法人税の申告が加わる、といった1期目ならではの論点もあります。この記事では、自分で決算・申告をする場合の流れと、つまずきやすい点を順に整理します。最後に、自分で進めるか、決算と申告だけを人に頼むかを見極める目安も載せています。
1期目の決算は4つの段階で進む
決算日までに帳簿を締める
決算の土台は、設立日から決算日までの取引がすべて帳簿に入っていることです。決算月になったら、次の点を確かめます。
- 法人口座・法人カードの明細がすべて仕訳になっているか
- 帳簿上の預金残高が、決算日の通帳残高と一致しているか
- 決算日時点で入金されていない売上(売掛金)と、支払っていない経費(買掛金・未払金)を計上したか
- 社長が個人で立て替えた経費や、社長と会社の間のお金の貸し借りが整理されているか
月々の入力が止まっていると、ここで数か月分をまとめて処理することになります。日々の記帳の始め方は設立後の記帳・経理を自分で始める方法にまとめています。
決算整理をして決算書を作る
決算整理とは、1年分の数字をその期の正しい損益に直す作業です。長く使うパソコンや設備は、金額に応じて減価償却(購入額を何年かに分けて経費にする計算)を行い、在庫があれば棚卸をして残っている分を資産に振り替えます。設立前にかかった費用は創立費・開業費として扱えるものがあります。整理が終わると、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書ができあがります。
株主総会で決算を承認する
法人税の申告は、株主総会で承認された決算(確定決算)にもとづいて行います。社長1人が株主の会社でも、決算を承認した株主総会の議事録を残しておきます。役員報酬の金額もこの時期に次の期の分を決めることが多いので、役員報酬の決め方もあわせて確認してください。
申告書を出して納付する
決算書をもとに、国の税金(税務署)と地方の税金(都道府県・市区町村)の申告書を作り、期限までに提出して納付します。申告書を出しても、納付が遅れれば延滞税がかかります。申告と納付は同じ日に済ませる段取りにしておくと確実です。
設立1期目だけの3つの論点
中間申告はない
法人税の中間申告は、前の事業年度の法人税額をもとに要否を判定します。1期目には前の事業年度がないため、中間申告はありません。消費税の中間申告も前の課税期間の年税額で判定するため、1期目は対象外です。2期目からは、前期の法人税額を12か月換算した半年分が10万円を超えると法人税の中間申告が、前期の消費税の年税額が48万円を超えると消費税の中間申告が必要になります。
赤字でも均等割は納める
法人住民税には、所得に応じてかかる法人税割と、会社があるだけでかかる均等割があります。均等割は赤字でも納めます。標準税率では、資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の会社で、都道府県民税2万円と市町村民税5万円の合計7万円です。自治体によっては上乗せしているところがあり、1期目が12か月に満たない場合は月数に応じた額になります。赤字でも申告書の提出は必要です。期限内に出さないと青色申告の承認の取消しにつながることがあり、赤字を翌期以降に繰り越す欠損金の控除も受けられなくなります。
防衛特別法人税の申告が加わる
2026年4月1日以後に始まる事業年度から、防衛特別法人税の申告が始まりました。法人税額(基準法人税額)から年500万円を差し引いた額に4%をかける税金で、法人税額が500万円以下の会社は税額が0円になります。ただし税額が0円でも申告は必要とされています。申告欄は法人税の申告書に組み込まれているため、法人税の申告と一緒に出す形になります。1期目が12か月未満なら、500万円の控除額も月数に応じて小さくなります。
税目ごとの申告先を押さえる
税務署に出すもの
法人税・地方法人税・防衛特別法人税は、本店所在地を管轄する税務署に申告します。決算書と勘定科目内訳明細書(科目ごとの残高の内訳)、法人事業概況説明書を添付します。青色申告の承認を受けるには、設立の日以後3か月を経過した日と1期目の終了日のいずれか早い日の前日までに申請書を出している必要があります。まだの場合は税務署・都道府県・市区町村への届出を確かめてください。
都道府県・市区町村に出すもの
法人事業税・特別法人事業税と法人住民税(都道府県民税・市町村民税)は、地方の税金です。都道府県税事務所と市区町村の両方に申告します。東京23区に本店がある会社は、市町村民税にあたる分も含めて都税事務所にまとめて申告します。
消費税は1期目に申告が要るか確かめる
消費税は、納税義務を判定する基準期間(前々事業年度)がない1期目は、原則として納税義務がありません。ただし、資本金1,000万円以上で設立した会社や、インボイス発行事業者の登録をした会社は課税事業者になり、1期目から申告が必要です。インボイス登録で課税事業者になった小規模事業者向けの2割特例は、法人は2026年9月30日を含む課税期間で終わっており、これから設立する会社は使えません。1期目から簡易課税を選ぶ場合は、1期目の間に届出書を出します。
会計ソフトとe-Tax・eLTAXで自分で出す
決算書は会計ソフト、申告書は申告ソフト
会計ソフトで作れるのは、多くの場合決算書までです。法人税の申告書(別表と呼ばれる計算書類)は、会計ソフトとは別の申告書作成ソフトか、国税庁のe-Taxソフトで作ります。地方税の申告書も同じソフトで作れるものと、eLTAXの専用ソフトで作るものがあります。どのソフトで何を作るのかを、決算月より前に決めておきましょう。
電子申告の準備
e-Tax(国税の電子申告)を使うには、開始届出書を出して利用者識別番号を取得し、代表者のマイナンバーカードなどの電子証明書を用意します。eLTAX(地方税の電子申告)も利用届出をして、PCdeskという無料ソフトで申告できます。eLTAXの地方税共通納税を使えば、複数の自治体への納付をまとめて行えます。資本金1億円以下の会社は電子申告が義務ではありませんが、書面より手間が少なく、控えも残しやすくなります。
申告期限を延ばしても納付期限は延びない
定款で定時株主総会を決算日から3か月以内に開くと定めている場合などは、申告期限の延長の特例を申請できます。申請書は決算日までに出す必要があります。延長しても、税金を納める期限は原則のままで、2か月を過ぎた分には利子税がかかります。1期目は、延長に頼らず2か月以内に終える計画で進めるのが無難です。
自分で進めるか迷ったときの目安
次の4つがそろっていれば、1期目の決算・申告を自分で進めやすい状態です。
- 決算月までの記帳が毎月終わっていて、預金残高が合っている
- 消費税の納税義務と計算方法(一般課税・簡易課税)が決まっている
- 減価償却する資産や、社長との貸し借りの中身を説明できる
- 申告期限まで1か月以上の余裕がある
1つでも欠けている場合は、決算と申告だけを税理士に頼む方法もあります。依頼するかどうかの判断や費用の考え方は、税理士コンシェルジュで整理しています。手続き全体の期限は設立後90日チェックリストでも確かめられます。
よくある質問
設立1期目の決算・申告の期限はいつですか?
決算日の翌日から2か月以内が原則です。たとえば3月31日が決算日なら5月31日が期限で、土日祝日にあたるときは翌日にずれます。法人税と消費税は税務署へ、法人事業税と法人住民税は都道府県と市区町村へ、どれも同じ期限で申告と納付をします。延長の特例を受けても税金を納める期限は延びず、遅れた日数分の利子税がかかるため、納付は2か月以内に済ませる前提で準備してください。決算日は定款に書かれているので、1期目がいつ終わるかを最初に確かめておきましょう。
設立1期目に中間申告はありますか?
設立1期目に中間申告はありません。法人税の中間申告は前の事業年度の法人税額をもとに要否を判定する仕組みで、1期目にはその前の事業年度がないためです。消費税の中間申告も前の課税期間の年税額で判定するので、1期目は対象になりません。2期目は、1期目の法人税額を12か月に換算した半年分が10万円を超える場合や、消費税の年税額が48万円を超える場合に中間申告が必要になるので、1期目の申告が終わったら確かめておきましょう。
設立1期目が赤字だとどうなりますか?
赤字でも確定申告書の提出は必要で、法人住民税の均等割は納めます。法人税や法人事業税の所得にかかる部分はかかりませんが、均等割は所得に関係なく課税され、資本金等1,000万円以下で従業者50人以下なら標準税率で年7万円です。1期目に青色申告の承認を受けていれば、その赤字は欠損金として翌期以降10年間の黒字と相殺できます。そのためには毎期続けて申告し、帳簿書類を保存しておくことが条件になります。赤字の期こそ、期限内に申告しておくことが大切です。
