税理士 小松祐介氏 Vol.3 どうやって売上を上げるのか、仮説を立てて事業計画を明確に
この記事は2006年に掲載した起業家インタビューです。制度や数値は掲載当時のものです。最新の手続きは各カテゴリーの記事をご覧ください。
起業家必見! ヒト・モノ・カネはこう活かせ!
起業を成功させるには売上を上げなくてはいけませんが、あなたは自分の考えている事業は、どうすれば売上を上げられるか説明できますか? 売上を上げるための仮説を立てることで、なぜ起業が成功へと近づくのか? その秘密を税理士の小松祐介先生が解き明かします。
ゲスト:小松 祐介(こまつ ゆうすけ) 税理士
平成14年4月に小松会計事務所を設立。平成17年12月、アークス総合会計事務所に名称を変更し、現在に至る。社内税理士や公開準備に携わった経験を活かし、会社の外部からだけでなく、お客様のより身近な存在としてさまざまなアドバイスを提供している。IT関連事業の専門知識力により若手社長より多くの支持を受けており、現在、200社以上のクライアントを持つ。
1.外部ブレーンを用いて事業計画の客観性を保とう
大橋:先生の言われる経営資源とは具体的に何を指すのでしょう?
小松:単純に言えば、人、物、金、情報です。その中でも、表現は悪いですが使える、つまりお金になる人脈、情報が重要ですね。お金は必要ないモデルで事業を立ち上げることも可能ですし、制度的にも融資が受けやすくなっていますから、お金はあまり重要ではありません。もちろん、1円で事業ができるとは言いませんが……。
起業するのであれば、400万円から500万円の資本が必要になると思います。それだけの資本金があれば、500万円から600万円の資金を銀行から借り受けることができますから、最終的には1,000万円くらいの資本を用意できるでしょう。ですから、有効な人脈と自分の下についてくれる人、そして情報は重要ですね。特に、情報がないと起業を成功させることは厳しいと思います。
大橋:また、経営資源以外で起業家に求められる資質や能力は何でしょうか?
小松:必要なことは、仮説の構築、検証能力、そしてそれを分析する能力、行動力ですね。仮説の構築能力でいえば、例えば飲食店の経営では席数、回転率、客単価などの数字があるように、どんなビジネスでも数字を作る根拠となる何らかのベースとなる方程式を考える。それができないと経営は難しいと思います。
例えば、訪問販売で蜂蜜を売ろうとした場合に、1日に100件の電話して、3件のアポが取れて、営業にいくと1件契約が取れると考えると、1日にどれだけの仕事をすればどれだけの売上が上がるか仮説を立てることができます。
分析能力とは、仮説をもとに経験を積んでいったときに、結果を見ながら軌道修正することができるかということです。また、仮説通りにいくケースはまれですから、うまくいかなくなったときに、仮説そのものを覆さなければいけなくなります。覆すということは業務プロセスのすべてが変わるわけですから、そこで一からやり直す行動力と精神力があるのかということも重要です。その能力がないとうまくいかないと思います。
大橋:失敗したときは失敗の分析と事業計画の軌道を修正し、再度行動を起こす。そういうことを繰り返しやっていきながら事業の精度を高めていくということですね。
小松:そうですね。打たれ強く、失敗しても、何度も繰り返しやっていけるかでしょう。自分がこうだと思ったことに対してずっと走り続けられることですね。
また「なぜ起業するのか」「誰に何を売るのか」「その商品に優位性はあるのか」「いつまでに目標を達成するのか」ということを第三者にきちんと説明できないようであれば、起業はやめた方がいいと思います。これらの要素が明確でないまま起業しても、間違いなく失敗すると思います。
経営者には、常に変化の先頭に立ち、変化を研究し、自らの事業に応用できるかどうかを実践、検証していく姿勢が求められます。また、成功している社長で数字に弱い人はただのひとりもいません。高い分析能力によって事業の現状を数値から客観的に評価し、次なる事業計画を高い行動力によって策定、実行することが求められます。数値に基づいた「計画」→「実行」→「検証」→「計画」、というプロセスは経営に最低限必要なことです。
2.売上が上がるロジックがあるか、ないかがポイント
大橋:また、短期・中期・長期の事業計画が必要だと言われていますがどうでしょうか?
小松:起業時の段階では、3年くらいの計画があれば十分だと思います。それよりも、1年でもかまわないので、その事業でなぜ売上が上がるのかという根拠の資料であったり、計画をきちんと論理的に作れることがすごく重要です。
例えば、Eコマースであれば、売上を作るためにWEBサイトの購買率、アクセス数を上げることが必要な要素としてあります。そこでアクセス数を上げるためにメール配信したいと思ったとき、メールを配信するためには会員が必要となる。そこで会員を増やすために懸賞などの手段を利用しよう……という、プロセスを作った上で、これぐらいの売上が上がるだろうという計画を作っていくのです。
経費などは初年度や2年目くらいでは備品が5万円という世界ですから、一番重要になるのは何で売上が上がるのかというベースの資料です。他の部分は、ざっくりと家賃20万、経費5万、通信費5万などと、エクセルで簡単に作成するくらいで構いません。
なぜ売上が上がるのかという部分がないと、資金調達をしたくて周りの人に事業の内容を話そうとしたとしてもまったく理解が得られないでしょう。お金を出す人は経費などにはまったく興味がなく、何で売上が上がるのかということを必ず重要視します。ですから、売上が上がる根拠となる資料、また原価がある商売であれば原価の資料をきちんと作ることが重要です。
大橋:経営戦略について、根拠をもとに理論立ててしっかりと説明できることが重要なんですね。
小松:先に言ったように、仮説というのはいつか崩れるのでその度に軌道修正をしなくてはいけません。ですが、仮説を一切作らないで、売上が上がらないといっても、何をやってきたのかもわからないので、何をどのように修正していけばいいのかがわからなくなります。
また、そういう資料を作成しておくと、その事業ごとにすごくわかる人がいるので「そんな数字はありえないよ」などと、より現実的に教えてくれる。そうすることでより精度の高い仮説ができるのです。
起業前は仮説を立てるところまでやればいいですね。重要なのは売上が上がるためのロジックだけです。中期、長期になれば当然変わりますが、そこまで予想を立てることができる人というのはなかなか現実的にはいませんから。
大橋:例えば、会員数や売上も増えるという1年分の仮説を作成したとすると、新たな事業ができるようになるという仮説が2年目、3年目には見えてくると思うのですが……
小松:そこまでできると人は、経営をしっかりとわかっている人ですから、こんなことをこちらから言わなくてもしっかりと作り上げることができるでしょう。ですから、普通の起業家の人は、まず売上がどういうプロセスで上がるのかという流れを作って、それに対して転換のプロセスや転換率を作り、短期の目標を絶対にクリアしていくことでしょう。
ただ、仮説を立てることは重要ですが、あんまり大きな利益が出るものを作る必要はありません。「絶対にこれだけはやり遂げるんだ」という数字を作った方が気持ちも萎えないですから、実現が可能な数字を作った方がいい。
大橋:確実に成果を上げて、成長していく計画を作っていくことが重要なのですね。
小松:実際に成功している人たちは、細かな計画は作らず、1年目の経験をベースに、2年目、3年目の事業計画を作っていっています。一般的には3年目ぐらいまでの事業計画書を作っていくべきだと言われていますが、実際に3年後の計画といってもわかりづらいので、確実に達成できる1年目の計画を作成し、実行していく方が良いと思います。
半年くらい経つと経験から法則がわかってくるので、また計画を見直して1年分を作っていく。もちろん、事業の経験が長くなれば長くなるほど、精度の高い先の計画や予算が作れるようになっていきます。ですから、それまでは先の計画を作ることに時間を割くよりは、売上のプロセスをしっかりと作ることの方が重要だと思います。
大橋:その方がうまくいくのですね。
小松:多くの方は計画すらも作らないですから。ある一定規模の企業でも、大きな予算で作っている会社より、確実に数字を作るというやり方を取っている会社の方が伸びています。また、無理な予算を達成する会社もありますが、そういったところは人の磨耗が激しく、離職率が高くなります。そうなると経営も24時間戦闘態勢になってしまうので、堅実に確実に数字を上げていくことをお勧めします。
