税理士 小松祐介氏 Vol.1 突然の起業は成功しない、起業前の知識と人脈をまず活かせ
この記事は2006年に掲載した起業家インタビューです。制度や数値は掲載当時のものです。最新の手続きは各カテゴリーの記事をご覧ください。
起業家必見! ヒト・モノ・カネはこう活かせ!
新会社法が施行されて以降、起業が簡単になったと思っている方も多いでしょう。ですが、ある日、突然に起業したからといって、うまくいくものではありません。そこで、起業で失敗しないために事前にどんな準備をしておけばいいのか? どのようなノウハウや知識を持っていると有利なのか? 数多くの会社の会計コンサルタントを務める税理士の小松祐介先生に伺いました。
ゲスト:小松 祐介(こまつ ゆうすけ) 税理士
平成14年4月に小松会計事務所を設立。平成17年12月、アークス総合会計事務所に名称を変更し、現在に至る。社内税理士や公開準備に携わった経験を活かし、会社の外部からだけでなく、お客様のより身近な存在としてさまざまなアドバイスを提供している。IT関連事業の専門知識力により若手社長より多くの支持を受けており、現在、200社以上のクライアントを持つ。
1.失敗するか成功するかは起業準備で決まっている
大橋:最近は起業を目指す方が増えているようですが、これから起業、独立しようとするとき、経営の面からやっておくべき準備や必要とされる要素はどのようなことになるのでしょうか?
小松:独立する環境によって準備する要素は大きく変わってくると思います。経験のある事業で独立する場合は、その事業で得た経験や知識、ノウハウをベースとして、資金面について考えることを重要視していくべきでしょう。
大橋:独立を想定する環境によって準備する要素が大きく変わるという点について、具体的な事例をお伺いできますか?
小松:起業する場合、専門知識がないけれどある日突然サラリーマンを辞めて独立しようという人と、専門知識があって独立する人に大きく分けられると思います。前者の場合、既存の業務ではなく、人脈に頼って独立するパターン。後者の場合、職人かフリーランスでお仕事をしていて、事業規模や取引先などの関係で法人格にするのか、しないかだけの問題で起業するパターンと言えます。
後者の場合は、専門職であり、すでに手に職を持っているわけですから、どのルートで物を仕入れ、どう販売するかを経験としてわかっているので、苦もなく事業を発展させることができるでしょう。しかし、前者のように、経験などがないままに独立しようという人は、そもそもビジネスモデルを持っていないので「どんなビジネスをスタートしようか?」「何をやろうか?」といった基礎のレベルから考え始めなくてはいけないため、独立後に苦労してしまうようです。
例えば、Eコマースで事業を始めようとしても、楽天がいいのか、ヤフーがいいのか、それとも自社サイトがいいのかなど、カートを選ぶ選び方もわからない。商材をどこから仕入れていいのかわからない、といった問題に直面します。洋服屋にいた人など、なかには商材を仕入れた経験がある人もいますが、売った経験がないために、インターネットでショッピングカートをどのように始めたらいいか、サイトをどうやって作ったらいいか、どうやって運営したらいいかわからないという問題に陥るケースの方々が多数いらっしゃいます。そういう方々は、ひとりでがんばってやろうとするのですが、正直なところ失敗する人が多いのが現状です。
大橋:なぜ、そういった人たちは失敗するケースが多いのでしょう。もっと事前に勉強することで対応することはできないのでしょうか?
小松:多くの起業家は当初の資金的な面からできる限り経費を抑えてひとりでやろうとがんばってしまいます。知識や経験が乏しいなか、ひとりで事業を行っていくとすべてが中途半端になってしまい、どうもうまくいかないというケースが多いようです。
しかし、この人にはこれをやってもらおう、あの人にはあれをやってもらおうと、二人くらい雇うことができる資金力がある人は、事業の立ち上がりが比較的早いです。専門的な知識がある人の経験を買い、そういう人を用意して絶妙なバランスで起業をしていく人はうまくいきます。
要するに自分の経営資源を何に投下するかが重要になるのです。多くの人は自分の経営資源をどこに投下するかというポイントがずれてしまいがちです。
Eコマース事業で例えると、起業時にEコマースについて知識がある人を雇って、事業を大きくしていくプロセスを辿れば、成功する確率は上がると思います。また、アライアンスを組んで、仕入れを他社にやってもらい、販売はEコマースの代理店に売ってもらうことでうまくいくといった場合もあります。
Eコマースでは、お金を生み出すコアな部分としてのサイトの構築と更新、つまり運営が重要になるわけですが、その部分に資源を注力できずに事業体として中途半端になってしまうとことが多い。資源投下の軸がずれしまうと、サイトを作って商品を売ろうとしても思うように売れず、サイトを再度作り直し販売するという繰り返しで、失敗してしまうといったことが少なくないようです。
2.知識と経験が足りなければ人脈を生かそう
大橋:ただ、起業家の中には専門知識はなくても経営のセンスが長けている人がいます。例えば、経営能力が高い人、ビジネスの戦略を立てたり、分析予想ができたり、数字が読めたりする人たちです。このような人たちは、立ち上げようとする事業の経験がなくても、ある部分だけを外注することでうまくいくケースがあるようにも思いますが、いかがでしょうか。
小松:確かに、そういうこともありますね。例えば、外注として依頼するのではなく、ある業界に詳しく、経験があるお友達がいて、その人たちにバイトをしてもらって教えてもらう。そういう人脈をもとに、早期に事業を立ち上げてうまくいくケースもあります。
もちろん、外注でもいいのですが、外注先とは売っていくら、買っていくらの契約上の関係でしかないので、成果が上がるところに力を注ぐだけのドライな関係になってしまい、あまりうまくいかないかもしれません。
だからこそ人との繋がり、つまり人脈が大切になってきます。いつもいる飲み仲間も、ただの飲み仲間で終わるのではなく、いかに協力してもらい良い関係を築いていくかだと思います。特に、何の知識も経験もない人は、お金とかに関係なく自分に足りない要素を持っている人に協力してもらえて、より良い関係を築きながらビジネスをスタートできる人がうまくいくようです。
例えば、専門職の人は、起業に必要な要素が5つあったとしたら、経営という要素を抜かした4つくらいは既に経験や知識として備わっているものです。とりあえず起業しようという人は、単なる飲み仲間ではなく、有効な人脈を持っていて、そういう人に協力してもらうことが、事業を伸ばすために必要です。
大橋:人との繋がりとなると、相手が協力したくなるような将来のビジョンが重要になってきますね。
小松:自分の起業への情熱と経営理念が重要ですね。起業家の場合、経営資源が不足しているわけですから、それをカバーするには起業に対する情熱と経営理念を持つしかないのです。その情熱や理念が周囲に伝わったとき、初めて周囲の人間は「協力してあげたい」と感じます。これによって、不足している経営資源を少しずつ充足していくことができると思います。
