ワイキューブ安田佳生氏 Vol.3 『千円札は拾うな。』著者に聞く、伸ばす社長とつぶす社長の違い
この記事は2006年に掲載した起業家インタビューです。制度や数値は掲載当時のものです。最新の手続きは各カテゴリーの記事をご覧ください。
ゲスト:安田 佳生(やすだ よしお) 株式会社ワイキューブ 代表取締役
株式会社リクルートを経て、1990年にワイキューブを設立。主に中小ベンチャー企業を対象に業績向上を目的とした経営・人材コンサルティング事業を展開。著書『千円札は拾うな。』(サンマーク出版)やメールマガジン『サルならわかる経営の真実』など、著作も多数。
ワイキューブの斬新な発想力はオフィスに秘密があった? 海外からインテリアを取り寄せ、カフェやバーを併設した豪華なオフィスが必要だと代表取締役である安田佳生さんは語る。なぜ誰もが無駄だろう、やり過ぎだろうと思うようなことをするのか。多くの注目を集めている経営者が語る経営理念とは。これからの経営の形が見える必読の内容です。
1. 人の意見を聞く素直さ、柔軟さが経営を変える
山下:ワイキューブさんには、フロンティア精神や独立志向が旺盛な人材が集まってきそうですね。
安田:意外と独立志向の社員は少ないんですけどね。
山下:どういう方が多いですか?
安田:人としていい人が多いですね。「独立したい」といった気持ちやエネルギーは尊重しますけど、あまりガツガツした嫌らしい人は好きではないので、仕事ができそうでもそういった価値観のあわない人は採用しません。やっぱり、人間として譲れるものや譲れないもの、やっていいことと悪いことなどへの基準がある程度はあるので、そこがあわない人とはやっていけないでしょう。
大橋:ワイキューブさんには独立支援システムがあると聞いたのですが。
安田:ありますし、実際に独立した人もいます。独立志向でも、価値観があう人もいますし、独立志向なのかそうじゃないのかで採用しているわけではないですからね。
大橋:会社を維持し、継続的に発展し続けることって容易ではないですし、起業家の方でも2、3年目で大きな壁にぶつかるようです。安田社長が考える会社を伸ばす社長と潰す社長の違いはなんでしょうか?
安田:やはり、素直さじゃないでしょうか。独立をすると生活ができなくなるかも、借金を背負うといったリスクがありますよね、だから独立支援をお金でやっていたんです。ですが、やり続けていると、金だけ支援しても会社ってうまくいかない。独立支援はお金じゃないなとわかってきたんですね。経営者として重要なのは、素直さ、つまり、人の意見を聞く柔軟さですよ。
大橋:それは受け入れる、つまり自我を捨てることですね。
安田:まずは情報を選ばない。この情報は必要、この情報は不要と自分で決めつけないということです。結局、人の意見をフィルターにかけてしまうと、自分で考えているのと同じです。例えば、自分がどの本を読むのか決めてしまうと、自分に興味のない情報って入ってこない。
凄くなる人って、持っている物が多い人ではなくて、持っていない物が多い人なんですよ。もの凄い人脈とか、資金力とか、能力とか持っていると思いがちですが、そこにこだわりがない人が大きくなるんですよ。
大橋:それが安田社長がいう素直さなんですね。
安田:まぁ、柔軟さとも言えるでしょうね。
山下:起業家にはとっても勇気が出るお話ですね。人脈も資金も持っていなくていいわけですから。
安田:スタートする時点で失うものがないからとってもいいですよ。情報やアドバイスを選んでいる人は厳しいですね。会社を20年間やっているなら自分なりのやり方や成功ストーリーがあるので譲れないことがあると思いますが、創業当初はそういうことがあまりないはずですよね。であれば、なんでも取り入れたらいいんですよ。
大橋:どうしてもプライドが邪魔してできなかったりしがちですが、受け入れたり、変われる自分であったりできることでしょうか。
安田:何が一番大事か間違えないことですね。世の中変えたいとか、社会のために役に立ちたいと思うのなら、自分のプライドなんて小さいものです。そういうものより自分のやり方やプライドが大事なら、大きいことはできないですよ。持っているものの数より、もっていないものの数か多い方がかっこいいんじゃないか、って僕も30代後半で思いましたね。
大橋:何かきかっけがあったのですか?
安田:きっかけですか? また、のぞみの中ですかね(笑)。
大橋:やっぱりまい泉のお弁当を食べている時ですか?(笑)
安田:いやー(笑)。会社が潰れそうになって、いろいろ変えていって、結局、人の意見を聞かざるを得ないことがたくさんあって、その時に、自分が固執していたものは大したものではなかったと思ったんですかね。周りの人をいろいろ見て、受け入れてやってみる人の方が大物の社長なんですよ。
大橋:なるほど、そうやって受け入れると、たくさんの情報が集まってきますね、また、周りも素直な人に情報をあげたくなりますね。
安田:ただ、騙されますよ(笑)。でも、トータルで考えた場合、騙される以上にいいものが多いし、いい人や何とかしてやろうという人の方が多いから。絶対騙されないために人の意見は取り入れないのはもったいないですね、性善説でいかないと。それで騙されたら運が悪かったと思うしかないんです。その方が気持いいですよ、自分は悪いことはしてないし。
大橋:性善説でいても、一緒にやっていた仲間に裏切られたり、取引先に騙されたり、商売だけこっそりもっていかれたりということが現実にあるようですが、どう思いますか?
安田:いっぱいありますよね。でも、そんなことがあっても心がすさまないことじゃないですか。そうでない人との出会いの方が多いですから、良いことがあると信じた方がいいですよ。一度裏切られたからって、「もう二度と人は信用しない」っていうのはイケてないでしょ。裏切られても人を信じ続けた方がかっこいいと思いますよ。
経営者をやるんだったら、絶対に性善説でやらないとダメ。うちの社員は裏切らない、俺の周りの人は嘘をつかないと思うことですね。でも、僕は周りから「また騙されている」「見ていると心配だ」と言われていますけどね(笑)。
大橋:安田社長がですか?
安田:いろいろと止められますよ。だからといって、僕が人を疑ったりするような人だったら、役員やスタッフも僕と一緒に仕事をしていないと思いますよ。そんな正直なヤツだから人がついてくるんじゃないかと思っていますね。
大橋:そういう社長だからこそ、ここで働きたいとか、この人のために何かしてあげたいとか、スタッフも取引先も思う気がしますね。
安田:そういう人って騙し難いですよね。それでも騙そうとする人もいますけど、私も役員にお客さんや社員を連れて辞めていかれたこともありますし。だからといって他の役員に一切の決裁権を与えないというのも小さいじゃないですか。そういうことも人生にはありますよ。
山下:そこまで信頼されていると、一緒に働いて心が動きますよね。小さなことにも固執してしまう人が多い中で、そういったことを実際にされているのは、これから会社を選ばれる方にとっても魅力的な会社に見えますよね。
安田:でも、順番を間違えてはいけないと思います。会社を魅力的にみせるために、そういう風にしてはいけないんです。
大橋:結果的に、魅力的であることですなんね。
安田:よそからみてどう思われるかというより、自分がどう思うかの方が大事なんです。
2. 社員への投資をやり過ぎるまでやる!
山下:ところで、安田社長はオフィスに対してこだわりがあると思うのですが、一般的な視点からすると、先ほどおっしゃられていたように、投資しても回収できないものに入りますよね。
安田:お金を払ってお金で回収しようと思われているからでしょうね。それは自分の満足感や社員の満足感で回収したらいいと思うんですけど。
それに快適なオフィスを社員に与えたいだけでなく、どういうオフィスが会社として理想的なのかという実験でもあるんです。こんなオフィスではなくて、普通の機能的なオフィスの方が結果的にはいいのかもしれない。もちろん、僕らはこれがベストだと思っていないんです。会社としてどういったオフィスが良いかを見つけるためにお金を使っているというのはなかなか有意義だと思うんですよ。
山下:オフィスや環境を整えることで得られる経営的なメリットってありますか?
安田:いっぱいあると思いますね。東京の本社は内装に2億円をかけましたけど、そのおかげでマスコミなどに取り上げてもらえました。今では広告を普通に出してもブランド構築できないですから、広告費をかけるよりも、違うところにお金をかける方がいいですよ。僕らはもともとブランド構築のためにオフィスを作ろうと思ったわけではないので、余計に響くんでしょうね。
大橋:やらせっぽくないし、自然体でいいんでしょうね。ちなみに、ワイキューブさんではオリジナルグッズを販売されたり、セレクト品を揃えたりと、素敵なショップも構えていらっしゃるようですが、何か理由があるのですか?
安田:これもオフィスとかと一緒で、お金の使い方の一環です。上げた利益を何に使うのかということで、社員がお洒落になる、いいものに触れる、それが安く買えるといった、そういうことに使ってもいいと思ってます。
恵比寿オフィスの隣に「Y-style Salon」というスタッフ専用のセレクトショップを作ったのですが、うちの社員がおしゃれになったり、文化的に知らないものを勉強したり、着るものだけでなくオペラの情報や美味しいレストランの情報など、幅広いことを提供することで、仕事だけではなく、もっと文化レベルも高めてもらいたい。ですから、そういうものにお金を遣うことが素敵かなと思ってやっています。
大橋:会社のブランド構築も視野に入れたり、また結果としてつながっていたりしているのですか?
安田:当然、入っていますね。そういうものにこだわっている僕らが(世間的には)変わっているので、それを読んだ方々が興味を持ってくださって、取材が増えたりするということがありますから。中途半端にはやらない。先に言った「Y-style Salon」を作るのにも1億円くらいかかりました。けれど、2,000万円~3,000万円ではブランド構築の役に立たないんです。
何事もやりすぎることで広報のプラスになります。「このくらいならありえるだろう」ということは取材してもおもしろくないと思うんですが、「なんでここまでやるんだ!?」ということを取材したいんだと思いますね。社員に対して投資する時は、やり過ぎるくらい投資しています。やり過ぎるまでやることは戦略のひとつですね。
インタビューの感想
安田社長はとても物腰も柔らかで、スタッフを心から信頼していることが話をしている中からも伝わってきました。今回是非起業を考えるみんさまに事業成功の秘訣をお伝えしたく、取材の機会をいただきました。 これからの起業には、本当にビジョンが欠かせないと感じました。 山下
──Vol.1『ビジョンがない起業は成功しない』から読む
