資本金の決め方、設立時に1,000万円未満にするかの判断

設立時の資本金の決め方は、当面の支払いに足りる額を出し、その額でまかなえる限り1,000万円未満に収めるのが基本です。
資本金は会社の元手として登記される金額で、額によって設立から最初の2期の消費税の扱いや、法人住民税の均等割、定款認証の手数料が変わります。
額を小さくしすぎると、設立直後の家賃や仕入れの支払いで資金が足りなくなり、融資を申し込むときに自己資金の説明もしにくくなります。反対に、大きくしすぎると毎年の税の区分が上がる場合があります。
例えば、設立から半年の支払いに300万円かかる見込みなら、その額を出せるかを先に確かめ、次に税の区分を見ます。額を決める順番と境目の一覧、許認可や出資者の人数による注意点を順に整理します。
数値の確認日:2026年10月30日(国税庁ほかの公式ページで確認)
設立時の資本金の決め方とは
設立時の資本金の決め方とは、会社に最初に入れる元手の額を、設立後の支払いと税や手数料の区分を見比べて決める手順です。
資本金は、発起人や社員が出資したお金のうち、会社が資本金とした額で、登記事項として記録されます。発起人は株式会社をつくるときに出資する人、社員は合同会社に出資する人のことです。
登記された資本金の額は、取引先や金融機関も確かめられます。口座の開設や契約の審査で、資本金の額を書類で見られることもあります。
会社法は資本金の最低額を定めていないため、少ない額でも会社はつくれます。設立時の資本金の決め方で迷いやすいのは、いくらまで下げてよいかと、いくらを超えると負担が増えるかです。
払い込んだ資本金は会社の財産となり、設立後の家賃や仕入れ、給与の支払いに使えます。手元に残す個人の生活費と分けて考え、会社が当面の支払いを続けられる額を出します。株式会社も合同会社も出資の額を定款に書くため、定款を作る前に資本金の額を固めておくと、書類を作り直す手間を避けられます。
資本金の額で変わるのは、消費税の扱い、法人住民税の均等割、定款認証の手数料、登録免許税です。境目は1,000万円が最も影響が大きく、ほかに100万円と300万円などの区分もあります。均等割は、利益の有無にかかわらず法人が都道府県と市町村に納める住民税の一部です。
社長1人で設立する会社でも、資本金の決め方の基準は変わらず、設立後の支払いと税の区分を順に見ます。出資の受け方や会社の形の違いは別の記事で扱い、ここでは資本金の額をどう決めるかに絞ります。
資本金の額を境目の手前に収めるかを決める条件

資本金の額を境目の手前に収めるかを決める条件は、設立から2期の消費税、毎年の均等割、許認可や取引先が求める額、融資で示す自己資金です。
資本金を1,000万円以上にすると、設立1期目と2期目の消費税が免除されません。1,000万円に届かなければ、ほかの条件に当たらない限り、基準期間がない最初の2期は納税義務が免除されます。基準期間は、法人では原則として前々事業年度のことです。
均等割は資本金等の額で区分が決まり、赤字の年もかかります。資本金等の額は、法人税法で定める、法人が株主などから出資を受けた金額です。
総務省の解説の額では、従業者50人以下の会社の都道府県民税と市町村民税の合計は、資本金等の額が1,000万円以下で7万円、それを超え1億円以下で18万円です。同省の解説の額で比べると、均等割の差は1年で11万円で、設立から5年続けば55万円になります。
資本金をちょうど1,000万円にすると、消費税は「以上」の区分に当たって免除されず、均等割は「以下」の区分に入ります。設立時の資本金の決め方では、境目の言い方が税ごとに違う点に注意が要ります。
許認可の中には、資本金や自己資本の額を要件にするものがあります。自己資本は、会社の資産から負債を引いた純資産の額です。建設業の一般の許可では、自己資本が500万円以上であることなど、いずれかに当てはまることが財産に関する要件です。
資本金を大きくすると、融資を申し込むときに自己資金の多い会社として説明しやすくなる面もあります。設立時の資本金の決め方では、税の負担と資金の厚みの両方を比べます。
当面の支払いを境目の手前でまかなえるなら、その範囲で設立し、事業の見通しが立ってから増資する判断が基本になります。設立1期目の途中で増資して1,000万円以上になると、2期目の消費税は免除されなくなります。
- 設立から2期の消費税(1,000万円以上だと免除されない)
- 毎年の均等割(1,000万円以下か超えるかで額が変わる)
- 許認可や取引先が求める資本金・自己資本の額
- 融資の申込みで示す自己資金の額
消費税の納税義務が資本金で変わる仕組み
消費税の納税義務が資本金で変わる仕組みは、基準期間がない設立直後の2期に、期首の資本金の額で納税義務が免除されるかを判定する決まりです。納税義務は原則として基準期間の課税売上高で決まり、事業年度が1年の会社では、設立1期目と2期目に基準期間がありません。
基準期間がない期は原則として納税義務が免除されますが、期首の資本金が1,000万円以上の会社は新設法人として免除されません。期首の資本金の額が最初の2期の納税を左右するため、設立時の資本金の決め方では、この区分を最初に確かめます。
1,000万円未満の会社でも、免除されない場合があります。インボイス(適格請求書)を発行する事業者の登録をした会社や、設立1期目の特定期間の課税売上高等が1,000万円を超えた会社の2期目などです。
特定期間は、原則として前の事業年度の最初の6か月です。そこでの課税売上高か給与の支払額で、2期目の納税義務を判定します。
取引先から求められてインボイスの登録をする会社は、資本金の額にかかわらず納税義務が免除されません。登録の予定があるなら、免除を受けるために資本金を抑える意味は小さくなります。
免除される期間の詳しい判定や特定期間の数え方は、別の記事に譲ります。設立前に資本金の決め方を考えるときは、期首の資本金が1,000万円に届くかどうかを先に確かめます。
免除される期間でも、届出を出して課税事業者(消費税を納める事業者)を選ぶことができます。設備の購入が多く還付を受けたい場合などの選択で、個別の判断は税理士に確かめます。
例えば、資本金の額を1,000万円未満で設立した後、設立1期目の途中で増資したことにより資本金の額が1,000万円以上となった場合には、設立2期目は課税事業者となります。
出典:国税庁「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」(2026年10月時点)
融資を受けるときの資本金の目安

融資を受けるときの資本金の目安は、借りたい額と自己資金の釣り合いを説明できる額で、日本政策金融公庫の制度の案内に資本金の額の要件は書かれていません。同公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人が対象で、融資の限度額は7,200万円です。
同公庫の創業の手引は、自己資金の割合が高いほど借入の割合は低くなり、余裕をもった資金繰りができると説明しています。資本金に払い込んだお金は、会社が最初に持つ自己資金になります。
創業の手引には、必要な資金を設備資金と運転資金に分けて書く例が載っています。資本金で何をまかなうかも同じ分け方で考えると、整理しやすくなります。
資本金を小さくしすぎると、設立直後から借入に頼る計画になり、申込みで資金の出どころを説明する場面が増えます。設立時の資本金の決め方では、借りたい額との差を先に出しておくと判断しやすくなります。
資本金を大きく見せようと、一時的に借りたお金を払い込んですぐ引き出すことは避けます。払い込んだ資本金は会社の財産で、設立後は会社の支払いに使うお金だからです。
創業計画書は、同公庫が書式を用意している、創業時の事業の計画書です。必要な資金の合計と調達方法の合計を一致させるため、資本金の額は自己資金の欄と食い違わないように決めます。
設立時の資本金の決め方には、借入の返済の見通しも含めます。返済は設立後の売上から行うため、資本金に回す額と返済に充てる額を分けて見込みます。
資本金の額で変わる税と手数料の一覧
資本金の額で変わる税と手数料の一覧は、消費税、均等割、定款認証の手数料、登録免許税の境目を一覧にしたもので、下の表にまとめます。
株式会社の定款認証では、手数料の区分が資本金の額で分かれ、100万円未満は3万円、300万円未満は4万円、それ以上は5万円です。発起人などの要件を満たす100万円未満の会社は、1万5千円に下がります。
登記の税である登録免許税は、資本金に1,000分の7を掛けた額で計算し、株式会社で15万円、合同会社で6万円を下回ると最低額を納めます。株式会社の資本金がおよそ2,143万円までなら、この税は資本金を増やしても15万円のままです。
設立後も毎年続くのは均等割で、消費税は最初の2期の扱いが変わります。手数料と登録免許税は設立のときに払うだけのため、設立時の資本金の決め方では、毎年かかる均等割を重く見ます。
均等割の額は自治体によって上乗せがあります。大阪府の法人府民税の均等割は、資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下の区分で7.5万円で、総務省の解説の都道府県民税の5万円より高くなっています。
均等割の区分に使う資本金等の額は、資本金と同じ額になるとは限りません。準備金を積んだ会社は、資本金が1,000万円ちょうどでも区分が上がる場合があるため、本店を置く自治体の案内で確かめます。
株式会社の設立時の資本金の決め方では、資本金を数百万円の範囲で動かす限り、額が変わるのは定款認証の手数料です。合同会社は定款認証がなく、資本金がおよそ857万円を超えると登録免許税が最低額を上回ります。
資本金を減らす減資には、会社法で債権者が異議を述べる機会を設ける手続きが定められ、時間がかかります。そのため、設立時の資本金の決め方では、表の境目を設立前に確かめます。
| 区分 | 資本金の境目 | 変わる内容 |
|---|---|---|
| 消費税(設立1期目・2期目) | 1,000万円以上 | 新設法人として納税義務が免除されない |
| 法人住民税の均等割(毎年) | 1,000万円以下か、1,000万円超1億円以下か | 合計7万円か18万円(総務省の解説の額・従業者50人以下) |
| 定款認証の手数料(株式会社) | 100万円と300万円 | 100万円未満は3万円(要件を満たせば1万5千円)、300万円未満は4万円、それ以上は5万円 |
| 登録免許税(株式会社) | およそ2,143万円 | 境目までは最低額の15万円のまま |
※消費税は国税庁No.6503、均等割は総務省「法人住民税」(資本金等の額で判定・1億円以下の区分)、定款認証の手数料は公証人手数料令第35条、登録免許税は国税庁No.7191によります。毎年かかる均等割と、最初の2期の消費税が、1,000万円の境目で大きく変わります。
設立前に資本金の額を決める手順
設立前に資本金の額を決める手順は、設立後の支払いの見積もり、税と手数料の区分の確認、借入の計画との照合、払い込む額と時期の確定の順です。設立時の資本金の決め方は、支払いの見積もりを先に、税の区分の確認を後に行う順番になります。
支払いの見積もりでは、家賃、仕入れ、役員報酬や給与、設備の購入などを月ごとに表にし、売上が入り始める月までの合計を出します。余裕を上乗せした額が、資本金と借入で用意する額の目安です。
区分の確認では、1,000万円に届くかどうかと、100万円と300万円の区分を見ます。設立時の資本金の決め方で迷ったら、まず1,000万円未満でまかなえるかを試算し、資本金を数通りに変えて手元に残る資金を比べます。
借入の計画との照合では、借りたい額と自己資金の割合を見ます。個人の手元資金をどこまで会社に入れるかは、役員報酬を払い始めるまでの社長の生活費を残して決めます。
額を確定したら、発起人や社員が払い込む金額と時期を決めます。払込みの記録は設立の登記で払込みを証明する書類に使うため、誰がいくら出すかを事前に書面で確かめておきます。
定款に資本金の額を書いた場合、認証の後に額を変えると、設立の書類をそろえ直す手間が出ます。増資は設立の後でもできますが、増資の登記で登録免許税がかかり、1,000万円以上になる時期によっては消費税の扱いも変わります。
増資と消費税の関係を続けて確かめるなら、「設立後の消費税の免税と特定期間、2期目から課税になる条件」が役立ちます。免除される期間の詳しい判定と特定期間の数え方を、その記事で扱います。
- 設立後の支払いを見積もる
- 税と手数料の区分を確かめる
- 借入の計画と照らし合わせる
- 払い込む額と時期を決める
資本金を決めるときの注意点

資本金を決めるときの注意点は、税の境目のほかに、取引先や許認可、出資者の間の割合、増資の費用まで見ておくことです。
取引先が契約の前に、登記された資本金の額を確かめることがあります。額が小さくても法律上の問題はなく、取引の条件として求められる場合に合わせて決めます。
資本金を個人の貯金からすべて出すと、社長の生活費が足りなくなることがあります。会社と個人の両方の手元資金を比べて、無理のない額に決めます。
許認可が要る業種では、資本金とは別に自己資本や資産の額を求める要件があります。申請先の手引で条件を確かめてから、設立時の資本金の決め方を固めます。
出資者が複数いる株式会社では、払い込んだ額に応じて引き受ける株式の数が決まり、議決権の割合にも関わります。株式の割り当ては、資本金の総額と一緒に設立前に話し合います。
資本金の額を決めた理由は、創業計画書や融資の申込みで説明を求められることがあります。設立時の資本金の決め方を書き残しておくと、後から説明しやすくなります。
税の判断で迷う場合は、設立前に税理士へ相談する方法もあります。依頼先の選び方は、会社設立と起業時の税理士の選び方、創業期に失敗しない見極めの基準で詳しく説明しています。
増資の登記ごとに、増えた資本金に1,000分の7を掛けた額(最低3万円)の登録免許税がかかるため、設立時の資本金の決め方には、数年先の資金計画まで含めます。設立のときに払う法定の費用の全体は、次に読む記事で確かめられます。
よくある質問
資本金に最低額の決まりはありますか?
会社法に最低額の定めはありません。設立直後の支払いに足りる額かどうかで決めます。
資本金を1,000万円ちょうどにすると消費税はどうなりますか?
最初の2期は免除されません。新設法人の基準は1,000万円以上で、ちょうどの額も含まれます。
設立後に資本金を増やすと消費税に影響しますか?
増やす時期によって影響します。1期目の途中で1,000万円以上になると、2期目は課税事業者になります。
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