設立時の課税事業者選択届出書、設備投資の消費税を還付で取り戻す

設立した会社は課税事業者選択届出書を出すと設備投資の消費税を還付で取り戻せますが、原則2年、税抜100万円以上の設備を買うと3年は免税事業者に戻れません。
| 出すもの | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 課税事業者選択届出書(消費税) | 選択しようとする課税期間の初日の前日まで(設立後の最初の課税期間のように、事業開始の日が属する期間から選ぶ場合は、その期間の末日まで) | 納税地の所轄税務署長 |
| 課税事業者選択不適用届出書(消費税) | 選択をやめようとする課税期間の初日の前日まで(原則として、適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ出せません。一定の要件に当たるときは3年) | 納税地の所轄税務署長 |
| 消費税の確定申告書(還付申告を含む) | 課税期間の終了の日の翌日から2か月以内(その日が休日のときは翌開庁日) | 納税地の所轄税務署長 |
設立して間もない会社は、消費税を納める義務が原則として免除されます。免除のままでは、機械や車両などの設備を買ったときに払った消費税を、売上の消費税から差し引く計算に使えません。機械や車両の購入を控えている会社ほど、この点は気になるところです。
課税事業者を選ぶと、買った設備の消費税が売上の消費税より多い課税期間に、差額の還付を受けられます。ただし、選んだ会社には免税事業者に戻れない縛りがあり、税抜100万円以上の設備を買うと、その縛りが3年に延びます。
届出書を出す期限、縛りが延びる条件、還付される金額の例、申告までの手順を、国税庁の公式ページで確認した内容をもとに、順に整理していきます。
数値の確認日:2026年11月6日(国税庁の公式ページで確認)
設立時の課税事業者選択届出書と消費税の還付とは
課税事業者選択届出書とは、免税事業者が課税事業者になることを選ぶときに税務署へ出す届出書で、設立した会社の設備投資にかかる消費税の還付に関わります。
免税事業者とは、消費税の納税義務が免除されている事業者です。設立から最初の2期は基準期間(法人では原則として前々事業年度)がないため、原則として納税義務が免除されます。
課税事業者とは、消費税の申告と納税が必要な事業者のことです。課税期間とは、消費税額の計算の基礎となる期間で、法人は原則として事業年度です。
免税事業者のままでは、消費税の申告がなく、設備投資で払った消費税を差し引く手続きもありません。課税事業者を選ぶと、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引き、差額を納めるか、還付を受けます。
設立1期目の会社が課税事業者選択届出書を提出すると、設備投資をした課税期間の消費税額を、確定申告書で計算して還付を受けます。
設備投資の例は、機械や車両、パソコン、店舗の内装工事などです。金額が大きいほど、仕入れにかかる消費税も大きくなります。
設備投資の消費税を取り戻す仕組みは、課税事業者になって初めて使えます。決めるときの材料は、買う設備の金額、売上の見込み、2年の縛りの期間です。選ぶかどうかは、予定と見込みを見比べて、会社が決めます。
設立した会社が高額な設備を買う予定なら、届出書の提出を先に考えておきます。事業を開始した課税期間の末日までに出すと、その課税期間から課税事業者になれるためです。
設備投資が多額にあった場合や、輸出業者のように売上げに係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額が多く、経常的に還付が生じる事業者については、免税事業者であっても課税事業者を選択することによって消費税の還付を受けることができます。
出典:国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」(2026年11月時点)
設備投資の消費税はいくら戻るか

設備投資の消費税として戻る額は、設備の税抜価格に標準税率10%をかけた額から、売上にかかる消費税額を引いた額が目安です。
例えば、税抜800万円の設備を買い、課税売上高が200万円の課税期間では、仕入れの消費税が80万円、売上の消費税が20万円で、差額の60万円が還付の対象です。
設立1期目も、課税事業者選択届出書を提出した会社が還付を受ける計算の考え方は同じで、売上の消費税を超えた分が戻ります。設立直後は売上が小さく、設備投資の消費税のほうが多くなりやすい時期です。
控除できる額は、課税売上割合(課税期間の総売上に占める課税売上の割合)で変わります。課税売上割合が95%以上で課税売上高が5億円以下なら、課税仕入れ等にかかる消費税額の全額を控除します。
95%未満などのときは、課税売上げに対応する部分だけを控除し、個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。非課税の売上が多い会社は、控除できる額が小さくなります。
設立して半年の会社が1期目のうちに課税事業者選択届出書を出せば、届出書の提出前に払った設備の代金も、1期目の課税仕入れとして還付の計算に含まれます。
2期目から課税事業者を選ぶ場合、1期目に買った設備の消費税は、還付の対象になりません。設備を買う前に、1期目の末日までに届出書を出せるかを確かめます。
設備投資の見積書が手元にある会社は、税抜価格に10%をかけると、仕入れの消費税のおおよその額が分かります。税込の見積書は、税抜価格に直してから計算します。
還付の計算は、課税期間ごとに、売上の消費税と仕入れの消費税を比べて行います。買う時期を複数の期に分けると、還付される額もその期ごとに分かれます。
| 設備の税抜価格 | 仕入れの消費税額(標準税率10%) | 還付される額 |
|---|---|---|
| 300万円 | 30万円 | 10万円 |
| 800万円 | 80万円 | 60万円 |
| 1,500万円 | 150万円 | 130万円 |
※課税売上高が200万円で、課税売上割合が95%以上、全額を控除する計算の例です。実際の額は課税期間ごとに異なります。
設備の価格が大きいほど、売上の消費税を超える額が増え、還付される額も大きくなります。
期限は課税期間の初日の前日までか末日までか
期限は原則として、選ぶ課税期間の初日の前日までで、事業開始の日が属する期間から選ぶときは、その期間の末日までです。
設立1期目の会社が還付を受けたいときの課税事業者選択届出書の期限は、事業を開始した日の属する課税期間が1期目なら、1期目の末日です。
設立の日が2026年6月1日、決算日が2027年5月31日の会社が還付を受けるなら、課税事業者選択届出書の期限は2027年5月31日です。2期目から選ぶ場合も、2期目の初日の前日の2027年5月31日で、同じ日になります。
設立から半年がたっていても、1期目の末日までなら、課税事業者選択届出書を出して還付を受けられます。
期限を過ぎて出した届出書では、その課税期間から課税事業者になれません。決算日が近づく前に、期限の日を確かめておきます。決算日は事業年度で決まるため、設立の時点で提出の日を決めておくと迷いません。
設立後に事業を始めるのが遅れた会社は、事業を開始した日がどの課税期間にあるかで期限が変わります。迷うときは、所轄の税務署に確認します。
期限の日が日曜日などの国民の休日に当たっても、期限は延びません。その日までに提出がなければ、課税事業者を選ぶ規定の適用を受けられないと、国税庁のNo.6629(注2)が案内しています。
ただし、やむを得ない事情で間に合わなかったときは、事情がやんだ日から2か月以内に申請書を出し、承認を受けると、期限の日に出したものとみなされます。
2年間は免税事業者に戻れない縛りとは
2年間の縛りとは、課税事業者を選んだ会社が、事業を廃止した場合を除き、選択が始まった日から2年間は、免税事業者に戻れない決まりです。
2年という期間は、設立の時期や決算期の長さで、何期にまたがるかが変わります。予定を決めるときは、この2年のうちに売上がどれだけ伸びるかも考えます。
設立1期目の初日から課税事業者を選び、どちらも12か月の会社なら、1期目と2期目が課税事業者です。途中で売上が小さくなっても、この間は消費税の申告が続きます。
免税事業者に戻るには、消費税課税事業者選択不適用届出書を出します。出す時期は、選択をやめようとする課税期間の初日の前日までです。
ただし、原則として適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書は出せません。
設立1期目に課税事業者選択届出書を出し、還付を受けた会社も、この縛りの対象です。還付を受けた次の期に売上が伸びれば、売上の消費税を納める課税期間になります。
設立後の会社は、課税事業者選択届出書で課税事業者となった日から2年が過ぎるまで、還付の有無にかかわらず免税事業者に戻れません。
縛りの間は、還付を受けた期だけでなく、その後の期の売上と仕入れにも消費税の計算が続きます。設備投資の予定と売上の見込みを、2年分を見比べて確認します。
縛りが終わっても、免税事業者に戻れるとは限りません。2期目は特定期間の売上と給与、3期目以降は基準期間の課税売上高が基準になり、課税になることがあります。特定期間とは、2期目では1期目の開始の日以後6か月の期間のことです。
調整対象固定資産を買うと縛りが3年に延びる注意点

縛りが3年に延びる注意点は、税抜100万円以上の設備を買い、その課税期間を一般課税で申告すると、原則3年間は免税事業者に戻れない点です。
一般課税とは、売上の消費税から仕入れの消費税を実額で差し引く、原則の計算方法です。
調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物、機械及び装置、車両及び運搬具、工具、器具及び備品などのうち、消費税等を除いた税抜価格が100万円以上のものです。
延びる条件は、課税事業者になった課税期間の初日から2年を経過する日までに開始した課税期間中に、その資産の課税仕入れ等を行うことです。
設立した会社が課税事業者選択届出書で還付を受けた後に、2年の縛りが3年に延びるかどうかは、買った設備の税抜価格で分かれます。判定は資産ごとの税抜価格で行い、複数の合計額では判定しません。
例えば、設立1期目に税抜120万円の機械を買い、1期目を一般課税で申告すると、その1期目の初日から3年間は免税事業者に戻れません。
仕入れた課税期間の確定申告を一般課税で行うと、その課税期間の初日から原則3年間は免税事業者になれず、簡易課税制度も使えません。
設備投資が税抜1,000万円以上の高額特定資産に当たると、別の制限もあります。仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から、その課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間まで、免税事業者の制度は適用されません。
設立した会社が課税事業者選択届出書を提出して還付を受けた期に、100万円以上の設備を買うと、縛りが3年に延びる可能性があります。
設備投資の予定が複数ある会社は、設立1期目と2期目のどちらで買うかを、課税事業者選択届出書の提出と還付の時期とあわせて決めます。
| 設備の税抜価格 | 戻れない期間 | 起点と主な条件 |
|---|---|---|
| 100万円未満 | 原則2年間 | 課税事業者となった日から(事業を廃止した場合を除く) |
| 100万円以上(調整対象固定資産) | 原則3年間 | 仕入れを行った課税期間の初日から。一般課税で申告したとき。簡易課税制度も使えない |
| 1,000万円以上(高額特定資産) | 仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間まで | 翌課税期間から。事業者免税点制度は適用されない |
※高額特定資産の制限は、課税事業者を選んだ会社に限らず、課税事業者が高額特定資産を仕入れた場合にあてはまります。
設備の税抜価格が100万円以上かどうかで、免税事業者に戻れない期間が2年か3年かに分かれます。
設立後の課税事業者選択届出書から還付申告までの手順
手順は、課税期間を確かめ、届出書を出し、課税期間の終了後に消費税の確定申告書で還付を受ける流れです。
はじめに、設立の日と決算日から、事業を開始した日の属する課税期間の末日を確かめます。その日までに、納税地の所轄税務署長へ届出書を出します。
課税期間が終わったら、設備投資を含む課税仕入れの金額と、課税売上の金額を集計します。
消費税の確定申告書は、課税期間の終了の日の翌日から2か月以内に、納税地を所轄する税務署長へ出します。決算日が2027年5月31日の会社なら、2か月後の日は2027年7月31日ですが、土曜日のため、実際の提出は翌開庁日の2027年8月2日(月)までです。
届出書の期限は休日でも延びませんが、申告書は国税通則法の定めで休日の翌開庁日まで延びる点が異なります。
設立後の会社が課税事業者選択届出書の提出で還付を受けるときは、納める税額がなくても申告書を出します。還付は、申告によって受ける手続きです。
提出した届出書の控えは、提出した日を示す記録として保管します。集計では、設備投資の請求書や領収書から、税抜価格と消費税額を分けて拾います。会計ソフトの消費税区分を、仕入れのたびに正しく入れておくと、課税期間の終了後の作業が短くなります。
還付金は、申告書を出したあとに、税務署での処理を経て受け取ります。時期は申告の内容などで異なるため、資金繰りでは受け取る日を決めすぎないようにします。
売上がまだ立っていない課税期間でも、課税仕入れがあれば還付申告ができます。設立1期目から課税事業者選択届出書を使って還付を受ける手順は、届出書、集計、申告書の順に進みます。
- 設立の日と決算日から、事業を開始した日の属する課税期間の末日を確かめる
- その日までに、消費税課税事業者選択届出書を納税地の所轄税務署長へ出す
- 課税期間の終了後、設備投資を含む課税仕入れと課税売上の金額を集計する
- 終了の日の翌日から2か月以内に、消費税の確定申告書を出して還付を受ける
なお、課税事業者であっても、課税売上げがなく、かつ、納付税額がない課税期間については、確定申告書を提出する必要はありませんが、課税仕入れに対する消費税額や中間納付額があるときは還付申告をすることができます。
出典:国税庁「No.6601 申告と納税」(2026年11月時点)
課税事業者の選択が向かない会社の注意点

設立時の課税事業者選択届出書と還付が向かないのは、設備投資の金額が小さい会社や、売上の消費税が大きくなる会社です。
なお、設立時の資本金が1,000万円以上の会社と、インボイス制度の登録を受けた会社は、選ぶまでもなく課税事業者になるため、届出書は不要です。基準期間がなくても、納税義務は免除されません。
課税事業者を選ぶ前に、設備投資の予定時期が1期目か2期目以降かを、事業計画の中で確かめます。予定が決まっていない会社は、見積書がそろってから判断してもかまいませんが、1期目の末日までに届出書を出せる範囲に限ります。売上の消費税が大きくなる見込みの会社は、還付より納税が先に来る可能性があります。
設備投資の金額が小さい会社は、還付される額も小さくなります。縛りの2年間に売上が伸びれば、売上の消費税を納める期間が長くなるため、金額と売上の見込みを見比べて決めます。
設立後に還付を受けた会社でも、課税事業者選択届出書で課税事業者になっているため、売上が増えた課税期間は、売上の消費税を納めます。
免税の仕組みを続けて知りたいときは、「設立後の消費税の免税と特定期間、2期目から課税になる条件」で確かめられます。
設立から日が浅く、課税事業者選択届出書と還付の判断に迷う会社は、届出書を出す前に、税理士へ相談する手もあります。税理士を選ぶときの見方は、会社設立と起業時の税理士の選び方、創業期に失敗しない見極めの基準にまとめています。
よくある質問
設立1期目でも課税事業者選択届出書を出せますか?
出せます。事業を始めた日が含まれる課税期間なら、その課税期間が終わる日までに提出します。
課税事業者を選んだあと、すぐに免税事業者へ戻れますか?
戻れません。原則2年間は戻れず、税抜100万円以上の設備を買った期は、その期の初日から3年間です。
設備投資が100万円未満でも還付を受けられますか?
受けられます。ただし、売上の消費税より設備投資の消費税が多い課税期間に限ります。
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