前回はリスク分散として、事業をいくつも構築することの必要性について伺いましたが、さらに会社を継続的に成長させていくために必要なことはありますか?
ここまでは社長ひとりの力でも十分に経営が成り立つレベルですが、さらに成長させるためには、社長がしっかりと組織を構築できるかどうかですね。つまり、人を雇用し、経営者がしっかりと経営、マネジメントをしていくことだと思います。
確かに起業当初はなんでもひとりで始めて、完結し、売り上げをあげていく人がほとんどで、なぜか人を雇用する組織を作るということを忘れてしまう傾向にあるようです。そうならないために、どこの時点で人を雇用していくべきか、また経営者がしっかりと経営・マネジメントをしていくための考え方や方法を教えていただけますか?
経営の転換の目安は自分自身の仕事がいっぱいいっぱいになって誰かの手が必要になったときだと思います。その時点で社長としてやるべき仕事に徹すると考えを切り替えることです。社長としてやるべき具体的な仕事とは、全体の仕事の流れや仕組みを作り、それを把握し、またそれがスムーズに進んでいるかどうかを見守り、何かトラブルが起きたときは対応して責任を取り、監督することです。その組織で業務を遂行してくれるのはスタッフですから、その人たちとの環境作りが最優先になってくると思います。
スタッフを雇うとなると、経営者としてその人たちの生活のことも真剣に考えないといけないですし、雇ったとしてもすぐ辞められたり、こちらが求める人が求人に来なかったりと悩みも多いようです。経沢社長はそのようなとき、どのように対応されていらっしゃいましたか?
私も人を雇うまでは、自分ひとりが食べていければいいし、うまくいかなければ会社をたたんで再就職すればいいと思っていたんですね。ただ雇った瞬間から、そのスタッフの固定収入を稼がないといけないと思い、しっかりとした事業モデルを考えなくてはいけないというような覚悟が決まり、スタッフを幸せにしょうという思いも芽生えました。そうやって責任を背負うことで人間として、そして経営者としての器が大きくなっていくのだと思えましたし、それにより会社や自分も成長できたのだと思います。
もちろん、最初はスタッフを雇うことに苦労しました。まず、会社にとって必要な人材を採用するには、自分の会社の採用力をあげる努力をしないといけません。特に小さい会社ならばぴったりと仕事にあてはまる人材が必要になってきます。有名な会社であれば会社のブランド名だけで人材が集まってくるかもしれませんが、小さい会社ではそうはいきません。
トレンダーズではどのようにしていますか?
 社風や社員の様子、仕事の内容など、うちに来ていただきたい人にとって魅力的な、心が揺り動かされて一緒に働きたいと感じられる内容をWEBサイト上で掲載しています。また 採用の過程においては、フィーリングで採用するのではなく、できるだけ書類やデータで冷静に判断することです。
例えば、書類やデータの判断材料として履歴書や職務経歴書があります。書き方ひとつでも、汚い字で書いてあったり、二本線で消してあったり、添付する証明写真が友達との写真を貼ってあったりといい加減だったりすると、採用してもお客様に対して丁寧な対応ができないなと想像がつきます。あと、文章も相手、つまり応募する会社に対して相手側のニーズを汲んで自分のセールスポイントを売り込んで伝えることができなければ、仕事をしてもおそらくうまくいかないということがわかります。
なるほど。採用活動には、経験が必要なんですね。
そうやって何度も人材採用を経験することで、経営者自身の採用スキルあげていくことです。もちろん、採用する側として面接などの採用の過程において、相手が活躍できるような動機付けをしていくことも重要です。また、マネジメントをしていてよく思うのが自分とスタッフとの距離感をいつも考えておくことですね。スタッフをほったらかしたり、干渉するのではなく、責任はすべて自分がとることが前提で、スタッフを信用して好きに仕事を任せしながら、場合よっては、軌道修正してあげることだと思います。
また、経営者は3年、5年といったスパンで仕事をやっていますが、スタッフは目の前の仕事、現在をみています。ですから、経営者であれば長期的に考えた場合我慢できることでも、スタッフにとっては難しいこともあります。その意識感覚の違いを把握し、対応していくことがとっても重要になってきます。そのためには経営者が自らの自我を抑え、感情をコントロールすることが必要ですね。 |