創業融資は日本政策金融公庫と制度融資をどう使うか、自己資金と創業計画書の準備

創業融資は、設立直後でも申し込める日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を軸に考え、足りない分を自治体の制度融資で補い、自己資金と創業計画書で返済の見通しを示すのが基本です。
| 制度 | 申込先 | 上限と期間 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金 | 本店所在地を管轄する公庫の支店(インターネット申込) | 7,200万円。設備資金20年以内・運転資金10年以内(据置期間はいずれも5年以内) |
| 自治体の制度融資(創業向けの信用保証を使うもの) | 自治体の窓口・信用保証協会・金融機関(制度ごとに異なる) | 信用保証は3,500万円まで。期間や金利の上限は自治体の制度ごとに決まる |
会社を設立したばかりで決算書がない段階でも、創業向けの融資は用意されています。代表的なのが政府系金融機関である日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資と、都道府県や市区町村が信用保証協会・金融機関と組んで行う制度融資です。実績のない会社に貸すかどうかは、事業の計画、社長の経験、自己資金で判断されます。この記事では、2026年10月時点の公庫の公式情報をもとに、2つの制度のしくみ、自己資金の考え方、創業計画書と面談の準備、両方を組み合わせるときの順番を整理します。上限額や金利は見直されることがあるため、申し込む前には必ず各機関の最新の案内で確かめてください。
実績のない会社が借りられる理由
普通の銀行融資は、過去の決算書をもとに返済できるかを判断します。設立直後の会社にはその決算書がないため、創業融資では代わりに、これからの計画と、計画を実行できる人かどうかを見ます。具体的には、創業計画書に書かれた売上と経費の見通し、同じ業界での経験、どれだけ自分のお金を準備してきたか、という3点が中心です。
融資は、売上が立つまでの時間を買う手段でもあります。いくら借りるかの前に、どの月にいくら足りなくなるかを把握しておくと、借入額の根拠を説明しやすくなります。
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金
対象と上限
対象は、新たに事業を始める人と、事業開始後おおむね7年以内の人です。適切な事業計画を立てて、それを実行できると認められることが条件になります。使いみちは、事業を始めるための設備資金と運転資金です。融資限度額は7,200万円で、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内、いずれも据置期間(利息だけを払い元金の返済を待ってもらう期間)は5年以内です。
金利と担保・保証人
金利は基準利率が基本で、女性、35歳未満または55歳以上の人など一定の要件にあてはまると、より低い特別利率が使えます。さらに、新たに事業を始める人と税務申告を2期終えていない人は、創業支援貸付利率特例制度により利率が0.65%引き下げられ、雇用を増やす場合は0.9%の引下げになります。具体的な利率は使いみち・返済期間・担保の有無で変わり、随時見直されるため、申込時に公庫の利率表で確かめてください。
担保と保証人は希望を聞いたうえで相談して決める形で、創業期の人は原則として担保・保証人なしで利用できるとされています。代表者の個人保証を外す経営者保証免除特例制度もあり、この特例による金利の上乗せはありません。
自治体の制度融資のしくみ
3者で成り立つ融資
制度融資は、自治体・信用保証協会・金融機関の3者で成り立つ融資です。お金を貸すのは銀行や信用金庫で、信用保証協会が返済を保証し、自治体が金利の上限を決めたり保証料(保証協会に払う手数料)の一部を負担したりします。制度の中身は自治体ごとに違うため、本店所在地の自治体の制度を確かめます。
創業向けの信用保証
創業時の制度融資では、国の創業関連保証や、経営者の個人保証を不要とするスタートアップ創出促進保証が使われます。保証限度額はそれぞれ3,500万円で、併用しても合計3,500万円までです。スタートアップ創出促進保証は保証人が要らない代わりに、保証料率が通常の創業関連保証より0.2%高くなります。
東京都の例
東京都の都創業融資は上限3,500万円で、返済期間は運転資金7年以内・設備資金10年以内(いずれも据置期間1年以内を含む)です。信用保証料は東京都が3分の2を補助します。経営者の個人保証と物的担保を求めない創業経営者保証不要型も用意されています。ほかの自治体でも、利子補給や保証料の補助を設けているところがあります。
特定創業支援等事業を受けておく
市区町村が認定した特定創業支援等事業(創業セミナーや個別相談)を受けて証明書をもらうと、創業関連保証を使える期間が広がるほか、公庫の特別利率の要件にもなります。融資を考えているなら、申込の前に自治体の窓口で受けられるか確かめておきましょう。補助金を含む創業期の支援は資金調達・補助金・創業支援にまとめています。
自己資金はどう見られるか
公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の要件には、自己資金の割合の定めは書かれていません。ただし公庫は、自己資金を重要な要素の一つとしたうえで、創業計画全体がしっかりしているかをより重く見るとしています。公庫の新規開業実態調査では、創業資金の総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度です。
自己資金は、金額だけでなく準備してきた経緯も見られます。給与から毎月積み立ててきた記録が通帳に残っていれば、計画的に準備してきたことの裏付けになります。申込の直前に人から一時的に借りて入れたお金は、自己資金として説明しにくくなります。資本金として払い込んだお金や、設立前に事業のために使ったお金も、領収書とあわせて説明できるようにしておきます。制度融資では、保証制度や自治体の要綱で自己資金の要件を設けている場合があります。
創業計画書と面談の準備
創業計画書に書くこと
公庫に申し込むときは、公庫のホームページからダウンロードできる様式で創業計画書を作ります。公庫が公開しているセルフチェックリストでは、創業の動機、経営者の略歴、商品・サービスとその強み、販売戦略、競合や市場、取引先との入金・支払の条件、必要な資金と調達方法、事業の見通しが確認項目に挙がっています。運転資金は事業開始後の半年程度の赤字を埋められるか、利益から借入を返済できる収支になっているかも見られます。売上の見通しは「客単価×客数×営業日数」のように計算の根拠を示すと、面談で説明しやすくなります。出店場所が決まっていないと資金計画や収支計画が固まらないため、店舗のある事業は場所を決めてから申し込みます。
そろえる書類
- 創業計画書
- 設備資金を申し込む場合は見積書
- 法人の場合は履歴事項全部証明書
- 運転免許証・マイナンバーカードなどの本人確認書類
- 飲食店など許可・届出が必要な事業の場合は許認可証
- 電子契約を使う場合は送金先口座の通帳の写し
許認可が必要な業種は、融資の前に取得の見通しを立てておく必要があります。調べ方は業種別の許認可を参照してください。
面談で聞かれること
申込の後には面談があり、資金の使いみちや事業計画について話を聞かれます。店舗や事業所の予定地を訪問されることもあり、オンラインでの面談もできます。計画に関する資料と、資産・負債がわかる書類を用意しておきます。数字の根拠、これまでの経験と事業の関係、計画どおりにいかなかったときの対応を自分の言葉で説明できるように準備しておくと落ち着いて臨めます。
申込から入金までの流れ
公庫の場合は、電話やチャット、支店窓口(事前予約)で相談し、インターネットで申し込み、面談を経て融資が決まると電子契約で手続きをして、指定口座に送金されます。申込から融資までは平均3週間程度とされていますが、条件によってはもっとかかります。支払いの予定日から逆算して早めに動いてください。
公庫と制度融資を組み合わせるときの順番
公庫と制度融資は別々の制度なので、組み合わせて使うことができます。進め方の目安は次のとおりです。
- まず必要資金の全体を積み上げ、公庫に相談して借りられる見通しをつける
- 公庫だけで足りない分や、時期をずらして必要になる設備資金を制度融資で検討する
- 制度融資を通じて、地元の銀行や信用金庫との取引を始めておく
- どちらにも他方への申込状況を伝え、返済額を合算した資金繰り表で無理がないか確かめる
借りた後は毎月の返済が始まり、据置期間が終わると返済額が増えます。役員報酬や税金の支払いも含めて資金繰りを見ておくことが大切です。設立後の手続き全体の期限は設立後90日チェックリストで確かめられます。
よくある質問
創業融資では実際にいくら借りられますか?
借りられる額は上限額ではなく、必要な資金の根拠と返済の見通しで決まります。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の上限は7,200万円、制度融資で使う創業向けの信用保証は3,500万円が上限ですが、実際の融資額は設備の見積書、数か月分の運転資金、自己資金の額、事業の経験などを見て判断されます。まず何にいくら使うかを積み上げ、そのうち自己資金で賄えない分を借入額として申し込むのが基本です。
自己資金がなくても創業融資は受けられますか?
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の要件には自己資金の割合の定めは書かれていませんが、自己資金がまったくない状態は不利になりやすいと考えてください。公庫は自己資金を重要な要素の一つとしつつ、計画全体がしっかりしているかをより重く見るとしています。公庫の調査では、創業資金に占める自己資金の割合は平均で2割程度です。制度融資は自治体や保証制度によって自己資金の要件を設けている場合があるので、要綱を確かめてください。
公庫と制度融資はどちらから申し込むべきですか?
迷ったら日本政策金融公庫から相談を始めるのが進めやすい順番です。公庫は窓口が1つで、申込から融資まで平均3週間程度とされており、必要額の全体像を相談しながら固められます。制度融資は自治体・信用保証協会・金融機関の3者が関わるため手順が多い一方、地元の金融機関と取引を始めるきっかけになります。両方を使う場合は、それぞれに他方の申込状況を正直に伝え、返済額を合算して資金繰り表に落とし込んでください。制度融資の申込窓口は自治体によって異なります。
